そもそもクルド人とは
クルド人とは『中東北部のクルディスタンと呼ばれる山岳地帯に住むイラン系民族であるがイラン共和国のペルシア人とは異なる』と定義されているようだ。主としてトルコ南東部及び東部、シリア北東部、イラク北部、イラン北西部に跨る地域に暮らしており推定人口は4000万人以上らしい。
しばしば『国家を持たない世界最大の民族』と形容されている。トルコ国内には約1500万人のクルド人がいるがトルコ総人口8700万人の17%を占めておりトルコ共和国にとりクルド人は大きな存在であろう。
クルド人の独立を標榜するクルド労働者党(KPP)は、1984年から武装闘争を開始、数々のテロ事件を起こしてきたが、エルドアン政権下の2013年より和平交渉が断続的に行われ紆余曲折を経て、今年2025年2月にKPPは存在意義がなくなったとして正式に自主解散した。
他方でクルド人も合法的に権利拡大を図るべく政党活動をしてきた。当然ながらクルド人国会議員も少なからず存在する。少し古いが2015年の総選挙ではクルド系の国民民主主義党が得票率10%でトルコ国会総議席数600の内79議席を獲得している。
クルド人居住地域を現地調査した元国連高等難民弁務官東京代表の東洋英和女学院大学院滝澤三郎教授は「クルド人に対する差別はないとはいえないが、クルド人というだけで身の危険を感じるような迫害を受ける状況ではない」とコメントしている(『「差別はあるが命の危険感じず」 トルコのクルド人、元UNHCR駐日代表が調査』産経デジタル)。
トルコの庶民の大半はクルド人に対して驚くほどネガティブ
【ガソリンスタンドの従業員30代】
7月22日。エーゲ海沿いの町アイワルク付近のガソリンスタンドで30代の2人の男性従業員は口を揃えてクルド人は“テロリスタ”(トルコ語でテロリストを指す)と表現した。ちなみにトルコ語でクルド人は“キュルト”という。筆者がクルディスタン地方と言ったら「政治的にクルディスタンは存在しない。あくまでトルコ共和国の一部である」とクルド人が自治を求めている地域そのものの存在を罵るように完全否定した。やはり過去のKPPの武力闘争の悪夢が消えないのだろうか。
【スポーツマンの大学生】
7月22日。チャナッカレから来たご自慢の高級ロードレーサーに乗る自転車野郎の大学生は「クルド人は信用できない。クルド人活動家は欧米の人権保護団体、国際機関、外国のメディアなどにクルド人がトルコ政府やトルコ人から差別・迫害・弾圧を受けていると触れ回っている」と非難。クルド人活動家の狙いは外国から支援金を引き出すのが目的で「金のためなら嘘八百を並べる」とこき下ろした。
【58歳の無職らしいバツ2の独身男性】
8月20日。地中海に面したフェティエの無料キャンプ場で出会った元観光ボート運転手の58歳の二度離婚歴のある独身男性。何を生活の糧にしているのか得体の知れない御仁。チェーンスモーカーで朝から酒を飲んでいた。片足が義足であったので或いは障害者年金をもらっているのだろうか。
クルド人については“野蛮”で節操がないので“子沢山”であると口にするのも汚らわしいというように話した。さらに「クルド男は暴力性向が強く、特に女性への性暴力は日常茶飯事だよ」と続けた。
筆者はトルコから帰国後に婦女暴行罪で逮捕されたクルド人の裁判で懲役の有罪判決がでたことを報じたTVニュースを思い出す。傍聴席にいた被告の家族が「こんな事件で刑務所に入れるなんて日本の裁判は間違っている」と叫んでいたというのだ。クルド人にとり婦女暴行は出来心による万引のような軽微な犯罪なのだろうか。
川口のクルド人に対するトルコの現場の警察官の見解
8月22日。筆者はチャルトゥトゥというエーゲ海沿いの小さな町の警察署で一晩お世話になった。適当なテント設営場所見つからず、困っていたらパトカーが来たので相談したら「警察署が一番安全だ」と言われ警察署構内で野営した。翌朝事務所に挨拶に行ったらお茶を飲みながらの歓談となった。20代から50代まで6~7人の現場の警察官は明朗闊達。彼らは英語が不得手なのでスマホの通訳アプリが大活躍。
川口のクルド人問題について説明すると「『身の安全を守るために日本に政治亡命したい』というのは全くのデタラメで何の根拠もない」「そもそもトルコの警察は公正でありクルド人だからと差別しない」「トルコの警察は法令遵守を徹底している。法を犯さない限り逮捕することはあり得ない」とスマホアプリで代わる代わる発言した。
年配の警官が「嘘を並べて日本の役人を困らせて日本の市民に迷惑をかける。やはりクルド人らしい汚いやりかただ」と感想を述べたら全員が我が意を得たとばかりに賛同した。筆者には警察官たちも本音ではクルド人に偏見を持っているように思えた。
