2025年12月6日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年11月16日

(2025.7.2~9.24 85日間 総費用34万2000円〈航空券含む〉)

トルコはどこに行ってもケマル・アタチュルク

イズミック近郊の村のチャイハネ(トルコ風喫茶店)の外壁に掲示され たケマル・アタチュルクの肖像

 イスタンブールの新市街のジェイザール通り付近にはアンティーク・ショップが多い。どの店でも“アタチュルク”グッズが目立つ。前線で指揮するアタチュルク、地方を視察するアタチュルク、子どもたちに囲まれて微笑む晩年のアタチュルクなどの額縁に収められた古い写真。アタチュルクの肖像写真のカレンダー、肖像入りのペン立てや置時計などなど。

 トルコ東部をイスタンブールから海沿いに反時計回りで2500キロ走ったが、津々浦々でアタチュルクの肖像を否が応でも目にした。市役所、警察署、消防署など行政機関の建物にはトルコ国旗とアタチュルクの肖像が掲揚されていた。

 各地の目抜き通りはアタチュルク通り、中央公園はアタチュルク公園と名付けられ、学校や公園にはアタチュルク像が立っていた。ガソリンスタンドや商店やアパートや民家など民間や個人でもアタチュルクの肖像を掲げていた。

 筆者は過去半世紀の間に世界75カ国を旅行したが、政治家の肖像がこのように広くあまねく掲示されているのは初めてだった。半世紀前の中国における毛沢東の肖像ですら北京市内の主だった公の建物に掲示されているだけだった。

ケマル・アタチュルクは完全無欠の建国の父なのか

 チャナッカレのロンドン留学経験のある知識人によると、ケマル・アタチュルクは世界史的にも稀有な存在であるという。世界史に残るようないかなる偉人も歴史の審判により後世なんらかの批判を受ける。

 アタチュルクについては、第一次世界戦での軍功や国土防衛戦争でのギリシアや連合軍に対する勝利という軍人としての功績は当然のこととして、政治家としてトルコ共和国建国から近代国家建設の全てにおいて現代に至るまで批判される問題点がないという。政教分離、民主的選挙制度、国民教育制度、産業の近代化、国語表記文字をアラビア文字からアルファベットに変更などなど、全てにおいてアタチュルクの政治的遺産は現代のトルコ共和国の規範となり、基盤となっていると知識人は解説した。それゆえトルコ国民はアタチュルクを崇敬し、アタチュルクはトルコ国民の誇りなのだという。

フツウのトルコ人のアタチュルク愛

チェシメ近郊の小さな町の警察署の壁に貼られていたアタチュルクの軍 人時代の肖像

 驚くべきことに筆者が実際にトルコで会った全ての人が、例外なくチャナッカレの知識人と同様の認識を共有していた。そして誰もが笑みを浮かべ誇らしげにアタチュルク(トルコ語でアタは父、チュルクはトルコを意味する。つまりトルコの父の意)を賞賛する。

 アタチュルクは全てのトルコ国民に愛され尊敬され崇拝されているのだ。(注:筆者はトルコ総人口8700万人のうち、1700万人を占めるクルド人からアタチュルクについて話を聞いていないので7000万人のトルコ系トルコ国民の心情かもしれない)。


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