2025年12月28日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年12月28日

礼拝の呼びかけアザーンは録音? モスクでの礼拝は1日5回だが

チャナッカレ近郊のモスクの付属バスケットコートにテント設営

 モスクのミナレット(尖塔)のラウドスピーカーから、大音声で流されるアラビア語で礼拝を人々に呼びかける“アザーン”は、中東の町ではお馴染みである。筆者の見聞したところトルコでは、アザーンを唱える人はモスクの中のマイクが置かれた場所から生放送している。しばしばイマム当人がアザーンを朗誦していた。また時刻をセットしておいて録音の音声が自動的に流されるモスクも少なからずあった。

 トルコはなぜか大型の野犬が多い。面白いことにアザーンの朗誦が流れ始めると、一匹の野犬が遠吠えのようにアザーンに合わせて吠え始め、さらに数匹が加わるということがあった。まさに“門前の小僧習わぬ経を読む”である。

 イスラム教スンニー派では1日5回の礼拝を課している。夜明け前、正午、午後、日没後、就寝前である。礼拝の時間は、太陽の位置により計算して決められるので毎日少しずつ変わる。5回の礼拝時間はイスラム教カレンダーに記載されている。モスクの入口には電光掲示板で各礼拝時間を表示している。

1日5回の礼拝にモスクに参集する人は何人くらいか

 筆者の観察では、1日5回モスクで礼拝している信者は、トルコの西部ではほとんどいない。モスクの近隣に住んでいる引退した老人の中にはいるかもしれないが。

 チャナッカレの市街地のモスクでは、平日早朝5時前の礼拝に参集したのは、イマムを含めて4人だけ。トロイ遺跡近くの農村のモスクでは、早朝礼拝はイマム含めて3人。ミレトスの古代ギリシア遺跡付近の村のモスクでは、早朝礼拝のアザーンは放送されたが、モスクには電灯すら点いてなかった。おそらくイマムが休暇か何かで不在で、録音されたアザーンだけが自動的に放送されたのだろう。 カシュとアンタルヤ付近のモスクでは早朝礼拝はイマム1人だけであった。

 ウルジャ中心街のモスクでは正午の礼拝に約30人が参集。ボドラムの住宅街にある古いモスクでは正午の祈りに7人が参集していた。チャナッカレのフェリー乗り場の隣のモスクの前の公園では、正午の礼拝のアザーンの朗誦が始まると、三々五々と50人くらいの男女がモスクに参集した。公園にいた人々の3分の1くらいがモスクに参集したことになる。通常の勤め人にとり早朝礼拝は難儀であるが、正午の礼拝なら昼休みを利用して参集可能なのであろう。

 スィデの古代ギリシア遺跡の近くのモスクの正午の礼拝には、ざっと200人くらいが参集。モスクの横では週末のフリーマーケットが賑わっていた。やはり休日の昼間であれば仕事や学校がないので、大勢の信者がモスクに礼拝することが可能なのだろう。 

 ちなみに就寝前の礼拝は信者数人程度が普通であり、信者がおらずイマム1人だけが礼拝している姿も何度か見かけた。

モスクでの時間外の礼拝とマスジッド(簡易礼拝所)

古代ギリシアのアスペンドス遺跡近くの町の4本のミナレットが美しい 壮麗なモスク。モスクのパティオでテント設営

 モスクの本堂は、通常早朝礼拝から就寝前礼拝までの時間は扉を開いている。この時間内であれば自由に礼拝できる。仕事の関係で1日5回の礼拝時間に来られない信者は、時間のある時に礼拝することも可能である。午後の時間帯にそうした事情の信者が熱心に祈っている姿を頻繁に見かけた。フェティエの農村部の小さなモスクでは3時頃男性と3歳くらいの男児が礼拝していた。男児は男性の仕草を一生懸命真似しており微笑ましかった。

 トルコの夏は午後1時~4時が暑さのピークとなる。猛暑でもモスクの本堂は涼しく風通しも良いので、筆者はしばしばモスクの本堂の絨毯に寝転んで休息したので、個人礼拝の人達と親しくなった。

 また大きな会社やホテルや幹線道路の休憩所には、トルコでマスジッドと呼ばれる簡易礼拝所が設けられている。基本的には24時間開いており、モスクに行けない信者が自由に礼拝できる。幹線道路脇のマスジッドでは、トラックドライバーが床に頭を打ち付けて真剣に祈る姿が印象的だった。

 このようにモスクでの定時の集団礼拝だけでなく、個人が自由に礼拝する環境がある。現代の都市型市民生活ではモスクでの1日5回の定時礼拝は不可能であるが、現在トルコの庶民は時間をやりくりしてアラーに祈りを捧げているのだ。

 以上 次回に続く

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