2025年12月14日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年12月14日

(2025.7.2~9.24 85日 総費用34万2000円〈航空券含む〉)

ドイツ語を話せますか?

 自転車旅行中に現地のトルコ人から何度も聞かれたのが、「ドイツ語を話せるか」という質問である。ホテル、レストラン、土産物屋といった外国人観光客相手ではないフツウのトルコ人は英語が話せずトルコ語オンリーである。

 ところが意外にも英語はダメでも、ドイツ語なら話せるという中高年のトルコ男がいるのだ。彼らは若いころにドイツで働いてひと稼ぎして帰国したトルコ人なのだ。

 ちなみに筆者は10年くらい前にアルバニアを自転車旅行したが、やはり英語はほとんど通じない。かわりに「貴方はイタリア語を話せますか」としばしば言われた。イタリアは歴史的にアルバニアと関係が深く、ムッソリーニ時代にアルバニアをイタリアに併合したこともあり、戦後イタリア政府はアルバニア人を優遇して労働ビザを発給してきたのだ。

 ドイツに話を戻すと、最近日本の外国人労働者問題に関する論評で「戦後人手不足を補うためトルコ人を受け容れたドイツが現在抱えている問題に日本は学ぶべきだ」というような主張をしばしば目にする。しかし移住者側のトルコ人の立場での論評は見聞していない。トルコ人側から見たドイツへの出稼ぎについて多少見聞したので紹介したい。

セルチュクへ向かう途中のビーチ。ドイツ、フランス、オランダなどの 家族は近くの高級貸別荘からレンタカーでこのような隠れ家的なビーチに来る。ユーロ 高なのでトルコの物価高は余り問題にしていない

ジャーマン・ドリームを手にした成功者

【64歳のドイツ帰りの夫婦は来年の日本旅行を計画】

 7月26日。イエキというビーチ沿いの町で後輪がパンク。海に近い一軒の家で人影が見えたので挨拶すると主人らしき中年男性が笑顔で玄関に出てきた。チューブを修理するためバケツに水を入れてもらい作業した。日本から持参した空気入れが壊れて往生していたら足踏み式の真新しいポンプを貸してくれた。

 主人のプーゾは64歳。ながらくドイツで働き60歳で退職してトルコに帰国。現在は夫婦2人で暮らしているが1人娘が今年6月に3週間日本に遊びに行ったと。娘一家が来ると4歳の孫娘と遊ぶのが生きがいという好好爺だ。来年は夫婦で日本に桜を見に行く計画をしていると。

 プーゾは健康そのもので日焼けして逞しい。日本ならば年金の不足を補うべくまだまだ仕事をしている年齢だ。ドイツの老齢年金を受給してトルコで暮らせば十分生活に余裕があるのだろうか。

 ちなみに2024年の1人当たり名目GDP(米ドル)はドイツ5万5000ドル(世界17位)、日本3万2000ドル(36位)、トルコ1万5000ドル(65位)である。

【ドイツ生まれのトルコ系ドイツ人青年】

 7月28日。早朝、フォチャの手前のビーチリゾートで道に迷った。一軒の貸別荘で車に旅行荷物を積み込んでいる30代半ばの青年がいたので道順を聞いた。意外にも彼は流暢な英語を話した。彼はドイツ生まれのトルコ人、つまりトルコ系ドイツ人(ドイツ国籍)だった。父親が50年ほど前にドイツに働きに行きトルコ人の母親と結婚して彼が生まれたとのこと。ドイツの大学を卒業して現在はベルリンのドイツ企業で働いているという。青年は端正な風貌で立ち振る舞いは欧米人のようにフレンドリーだ。ドイツ社会では大学卒はエリートであるが経済的に恵まれている様子だ。

 彼は休暇中で奥さんと子どもと3人でトルコを自動車旅行しており、これから両親が住んでいる町に立ち寄る予定だった。父親が退職してから両親はトルコに戻り退職金で故郷に家を購入したという。

 父親のドイツへの出稼ぎ&移住により息子一家も含めフツウのトルコ人よりも格段に裕福な人生が実現したようだ。

【リゾート・マンションの住民の半数はドイツ年金暮らしの勝ち組】

 9月13日。Manavgatの海岸線は見渡す限り砂浜が続いている。ビーチから至近距離にあるリゾート・マンションの雑貨屋でビールを買ってパラソルの下で休憩した。先客のマンションの住人の一組の夫婦がまったりとトルコ紅茶で午後のティータイムをしていた。

 70代後半の旦那はドイツから帰国した退職者だった。旦那は片言の英語と翻訳アプリを駆使して筆者とコミュニケーション。イスタンブールに自宅があるが年の半分近くはリゾート・マンションで過ごしている。

 ドイツではデュッセルドルフで暮らしていたので日本人をよく見かけたという。デュッセルドルフで住んでいた家は人に貸しており、賃貸収入もあるのでドイツ年金と合わせて老夫婦の生活費としては充分だという。ちなみにこのリゾート・マンションの住民の半分近くはドイツ年金生活者とのことだった。

66歳のバツイチ独身のドイツの年金生活者。60歳で退職して大型バ イクで世界各地を旅している。高卒の電気工だが年金だけで悠々自適の世界漫遊をエン ジョイしている

新着記事

»もっと見る