トランプ大統領はサウジアラビア・イスラエルの関係正常化を強く望んでいるが、ガザで人道危機が起きた後では極めて困難だろう。そして、サウジ他の湾岸産油国は安定を望んでいるが、イスラエルが行っていることはその真逆だ、とするエルギンディ、ジョージタウン大学客員研究員の論説‘The Fallacy of the Abraham Accords’をForeign Affairs誌(電子版)が掲載している。要旨は次の通り。

イスラエルのネタニヤフ首相の支えとなっている米国の支持はいつまで続くか(dvids)
トランプ大統領は、アブラハム合意を拡大したいと考えている。アブラハム合意というのは、前トランプ政権時の2020年、イスラエルとバーレーン、モロッコ、アラブ首長国連邦(UAE)(註:スーダンも含まれる。)の国交樹立の事ことだが、第1期政権の重要な外交上の成果だった。
バイデン前大統領は、イスラエルとアラブの盟主サウジアラビアとの関係正常化を追求した。そうなればパレスチナ問題を風化させただろうが、23年10月7日のハマスのイスラエル奇襲とその後のガザの悲惨な衝突はこのイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を頓挫させた。
しかし、トランプ大統領は、アラブ諸国の指導者達にとってイスラエルとの関係正常化はパレスチナ問題よりも重要だと信じており、米国の仲介によるサウジアラビアとイスラエルの関係正常化に固執している。
アブラハム合意はこのような誤った思い込みに基づいており、パレスチナ問題の二国家解決や中東地域の安定といった米国の政策目標と整合性を有しておらず、あからさまにイスラエルを利している。幾つかのアラブ諸国がもはや、パレスチナ独立国家のために自国の国益や地政学的な関心を犠牲にしたくないということを示している。