2025年12月26日(金)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2025年12月26日

 ドイツのワーデフール外務大臣(キリスト教民主同盟:CDU)は、12月8~9日に中国を訪問して貿易問題などをめぐり王毅・共産党政治局員兼外相らと会談した。この背景には、欧州連合(EU)と中国の関係が冷え込む中、ドイツが希土類(レアアース)輸入など経済的な理由で、独自に対話のチャンネルを維持するという狙いがある。

中国の王毅外相(右)と会談したドイツのワーデフール外相(picture alliance/アフロ)

会談の実現自体が「成果」

 ワーデフール外相の訪中のポイントの一つは貿易問題だった。2025年に中国政府が実施した一部の希土や、ディスクリート半導体の輸出規制がドイツ企業に悪影響を与えている。このためワーデフール外相は、輸出規制のルールの透明化や、公正な貿易関係の重要性を訴えた。

 ただし中国が世界の希土の精錬能力をほぼ独占している中、ドイツの立場は弱い。実際今回の訪中で、輸出規制などをめぐる具体的な合意はできなかった。

 だがドイツにとっては、具体的な合意が得られなくても、訪中の実現自体が「成果」だった。その理由は、25年夏のワーデフール外相の発言により、独中関係がぎくしゃくしているからだ。

 ワーデフール外相は、25年8月18日に日本を訪れ、岩屋毅外務大臣(当時)と会談した。ワーデフール氏はドイツ国内でも「思ったことをためらわずに言う」性格で知られている。

 問題となったのは、会談後の中国批判だ。彼は「中国は東アジアの現在の状態を変更するという意図を繰り返し表明している。国境を自国に都合の良いように変えようとしている。世界の貿易にとって重要な地域(筆者注:台湾海峡を指すものと思われる)でのエスカレーションは、世界の安全保障と経済活動に深刻な影響を与える」と批判した。

 ワーデフール外相は、日本への出発前にも、「中国は台湾海峡や南シナ海周辺をめぐりアグレッシブな態度を強めている。これは欧州にも悪影響を与える。グローバルな関係が危険にさらされている」と指摘していた。


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