2025年12月5日(金)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2025年9月26日

 ヨーロッパの自動車業界が、モビリティー転換とリストラの波にさらされる中、ミュンヘンで9月9日から6日間にわたり、自動車見本市IAAモビリティーが開かれた。会場では、中国企業のヨーロッパ市場への関心の強さと、ドイツ企業が中長期的に主軸を電池だけを使う電気自動車(BEV)に移そうとしていることが強く感じられた。

ミュンヘンの王宮の中庭にメルセデス・ベンツが設置した展示場でも、メインはBEVだった。(筆者撮影、以下同)

100社を超える中国企業が参加

 IAAは以前ヘッセン州のフランクフルトで開かれていたが、2021年からは2年おきにミュンヘンで開かれている。今年の訪問者数は約53万人と過去最高を記録した。

 以前のフランクフルトでのIAAでは、車が見本市用ホールの中に展示されていた。これに対し、ミュンヘンでは主に業界関係者やジャーナリストらが訪れる見本市ホール(メッセ)とは別に、町の中心部の道路に「オープン・スペース」という展示場が設置され、市民が誰でも最新の車に触れられるようになった。見本市の名前もIAAから、IAAモビリティーに改称された。

 筆者が訪れた9月9日には、ときおり雨がぱらつき風も強い悪天候だったものの、子どもを連れた夫婦ら多くの市民たちが、オープン・スペースを訪れて、自動車に見入っていた。

 さらにIAAモビリティーと名付けただけあって、自動車だけではなく、自転車や公共交通機関に関する展示も行われていた。市民の自転車を無料で点検、修理するコーナーもあった。

IAAモビリティーでは自動車の展示だけではなく、自転車の無料修理も行われていた

 今年のIAAモビリティーには、37カ国から約750社の自動車メーカーやサプライヤーなどが出展したが、最も多かったのが中国企業で116社。中国勢のヨーロッパ市場への積極的なマーケティング攻勢を印象付けた。中国市場ではBEVの値引き競争が苛烈さを増しているため、中国のメーカーは、ヨーロッパ市場を重要なターゲットと見なしている。


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