2025年12月5日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年7月30日

 日米の関税交渉が合意に至った。結果は15%の相互関税であり、自動車については現状の2.5%から大きく引き上げられたとは言え、一旦は最悪の25%を覚悟していた中では、日本としては一息つくことができている。

アメリカでのトヨタ車の販売はトランプ関税でどう影響が出るのか(Justin Sullivan/gettyimages)

保守層にもハイブリッドを

 まず、トヨタ自動車は、この2025年後半から販売が本格化する26年モデルにおいて、多くの主要モデルに新型を投入している。具体的には、まず、北米で最もベストセラー車となっている中型SUVの『RAV4』をフルモデルチェンジし、ガソリン車を廃止して全車種ハイブリッドとする一方で、グレードやラインを多角化して細かなニーズを拾うようにしている。

 このRAV4については、24年のアメリカ国内での販売台数が47万5000台と大きいこともあり、トヨタは最終組み立て工場を、ケンタッキーを中心にカナダ、日本に分散してリスクを最小化する作戦だった。また、最悪の場合も織り込んだ価格の値上げも公表していた。結果的に、関税率が15%となったことで、完成車も部品も最悪のケースは避けられたわけで、この大きなボリュームの新世代モデル立ち上げに向けた障害はかなり除かれたと言えよう。

 RAV4がメインストリームのベストセラー車なら、よりアメリカの大地に根ざしたオフロード走行性能を持つ大型モデルは、レクサスブランド車と並んで、北米トヨタの利益を稼ぐ高付加価値モデルと言える。このカテゴリでも、大型SUVの『4ランナー』そして、高性能ピックアップトラックの『タコマ』にも新車が投入された。

アメリカでの人気が高いタコマも新車が投入される(TOYOTAホームページより)

 この2モデルに関しては、豪華な内装など艤装(ぎそう)に凝っただけでなく、サスペンションや動力伝達機構などにも手抜きのない改良が施されている。また、燃費や環境を気にしない保守的なドライバーがターゲットであるモデルだが、あえてハイブリッド車を設定している。

 ただし、あくまで保守層がターゲットであることから、経済性や環境負荷を前面に押し出すのではなく、「プラスアルファの馬力」を上乗せするためのハイブリッドという位置づけをしている。トヨタの誇る環境対策であるハイブリッド技術を、保守層にも啓蒙しようという姿勢とも思える。


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