2025年5月16日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年5月1日

 日米の関税交渉については、赤沢亮生大臣が再度訪米し、第二回の交渉が持たれることとなった。前回はトランプ大統領本人が突如登場した一方で、全体としては問題点の確認に終わった感がある。

 今回はいよいよ本交渉ということになるだろう。では、赤沢氏としては、何に留意したら良いのであろうか。

トランプ政権との交渉では、80年代の日米貿易摩擦の記憶を忘れてはいけない(AP/アフロ)

〝特異な〟トランプ政権に柔軟に対応を

 大前提として、今回の交渉においては日本としてトータルな国益を守るために、政府も与野党も世論も、一定程度の理解をすることが必要だ。その上で赤沢大臣に交渉担当者としての委任をする、これが一番大事である。必死で交渉してトータルでは十分な結果が得られても、担当官庁や与野党が越権行為だなどと難癖をつけるようでは、何も進まない。

 また、安全保障の枠組みなどトータルな日米関係を維持するためには、通商に関する具体的な点については総理了解の上で譲歩する局面も出てくるかもしれない。従来の常識からはあり得ない交渉になるし、筋論からの批判はいくらでもできるだろう。だが、状況の特殊性を考えると世論も与野党もある部分は許容してもいいと思う。こうした点を踏まえて、赤沢大臣には後顧の憂いなく全体的な交渉の成功を目指していただきたい。

 それはともかく、この間、つまり4月の第一回交渉以降に、関税交渉を取り巻く状況に変化が生まれているのは事実だ。それは、ナバロ氏やラトニック商務長官など急進派の影響力はやや低くなった反面、ベッセント財務長官の影響力が強くなったということだ。もっと具体的には、急進的な関税交渉が株価の乱高下を招き、大統領の支持率も大きく下がったことを受けて、政権全体としては「現実」へとシフトを始めたといえる。

 では、今回の日米間における第二回の交渉がこの流れを受けたものとなるかは、まだ判断はできない。もちろん、トランプ大統領は、中国との相互関税の緩和、全世界を対象とした自動車関税の緩和などを示唆する発言もしている。けれども、これを受けて今回の交渉が容易なものになるという楽観をするのは、まだ早いと思われる。


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