この2モデルの評判も非常に高い。例えば、テキサス州を本拠に新車のインプレッションを続けている、元米空軍メカニックのユーチューバー、サラ・グリーンウッド氏の "Sarah-n-Tuned" では、オフロード性能を中心に最大限の評価がされている。トヨタは、高燃費・高耐久性の小型車を大量販売しつつ、アメリカの保守派に受けるオフロード車をコツコツ改良してきたが、その技術力とデザインセンスはアメリカ人のハートをガッチリ掴んでいると言っていいだろう。
ちなみに、この2モデルについては、クルマとして、よりクオリティが重視される『4ランナー』は日本、より保守派のカルチャーに寄り添った『タコマ』はアメリカのそれもテキサスで製造するなど、サプライチェーンにも工夫がされている。
EVから戻ってきた風
もしかしたら今回の関税合意のメリットをトヨタ以上に享受できるのは、そのトヨタと資本提携関係にあるスバルの富士重工かもしれない。冬季は積雪や路面凍結に苦しむアメリカ北東部などでは、オール四輪駆動車(AWD)のスバルに対しては、絶大な信頼があった。
スバルは群馬県を中心に日本国内に大きな生産能力を有しており、現地生産比率は高くない。そんな中、戦略車「フォレスター・ハイブリッド」を投入して高評価を得ているスバルには、関税合意の恩恵は大きいであろう。
トヨタとスバルに関して言えば、この25年というのは経営戦略上、非常に難しい岐路に立っていた。24年の大統領選以前は、仮にアメリカで民主党政権が継続すれば、欧州連合(EU)や中国がそうであったように電気自動車(EV)へのシフトが加速するとみられていた。けれども、結果的には2期目のトランプ政権が発足すると、補助金カットなどによりEVシフトが停滞。併せて、厳冬期や酷暑のもとでは現在のEVは充電効率に弱点があることも知れ渡った。
そんな中で、EV化に慎重であり、コツコツとハイブリッドの「事実上は低い環境負荷」をアピールし続けていたトヨタには、運が巡ってきたとも言える。その好運を下手すれば帳消しにしかねなかった関税問題の暗雲が晴れたのは誠に喜ばしい。
では、トヨタをはじめとする日本の自動車産業は、今後も順風満帆かというと、中長期的には決して楽な環境が待っているわけではない。3つの大きな懸念がある。
