Z世代の車動向
1つは、特にアメリカの場合に顕著なのだが、若者の購買力が鈍っているという問題だ。決して不況ではなく、どちらかといえば景気が加熱気味のアメリカであるが、シリコンバレーの大手企業でも大規模なリストラが相次いでいる。また、現在は新卒の就職市場については冷え切っている。
これは、急速なAIの実用化が、プログラマー、金融アナリスト、ファイナンシャル・プランナーなどの初級職の雇用を奪っているからだ。こうした状況を受けて、トヨタの場合は16年に若者向け大衆車ブランド「サイオン」を廃止したほか、70年代から続いている大衆車ブランド『カローラ』を小型SUV『カローラ・クロス』を中心とした高付加価値モデルにシフトするなど、対策を講じてきた。
けれども、このまま若者のクルマ離れが続くようであれば、そして、その結果として、Z世代が移動手段としては自家用車の保有ではなく、「シェアリング」を選ぶのであれば、自動車メーカーのビジネスモデルは揺らいでしまう。
どうなる?技術革新
2つ目は、EVシフト、そして自動運転車(AV)シフトの問題だ。アメリカの場合、この2つの動きは、トランプ第二期政権によってブレーキが掛かっている格好である。EVに関していえば、北米で大きく先行していたテスラ社が、創業者の政権参画を経てブランドイメージを落とした格好となっている。
けれども、イノベーションは止まっていない。そして、EVにしてもAVにしても、次の大きなイノベーションの波が来たときには、明らかに世界の自動車メーカーの業界秩序は激変するであろう。
進む保護主義で日本の産業は空洞化
3つ目は、国際分業と保護主義の問題だ。今回のトランプ政権の関税政策は、仮にウィンウィンの関係ができていても、国際的なサプライチェーンを信用せず、製造業を国内回帰へと誘導しようという、壮大な実験であった。現時点では、株価の動揺などにより現実的な関税率に着地しようとしているが、大統領の任期中に揺れ戻しが来る可能性は否定できない。
一方で、ニューヨーク市長選の予備選で、民主党では社会主義者候補が大勝するなど、民主党の左派の勢いも強くなっている。この民主党左派も、トランプ氏に勝るとも劣らない保護主義的な「雇用」政策を掲げている。
つまり、アメリカの場合は左右両派の中に保護主義が存在している中では、より極端な保護主義的な政権が生まれる可能性は否定できない。そして、このトレンドは世界共通にある。
