ドイツのベルリンで9月初め、欧州最大の家電・IT見本市「IFA」が開かれた。今年で101回を数える世界で最も歴史のあるこの見本市には、かつて日本の家電メーカーが大挙して出展していたが、コロナ禍を機に出展が激減。韓国や中国、トルコのメーカーが席巻する。
会場では、テレビ映像技術や生成AI、電動の自転車やオートバイといった新たな移動手段など、最新技術がお披露目された。グローバルな家電市場における最新動向をIFAの会場で追った。
幅100mの大型広告が韓国サムスンから中国メーカーに
「あれ、サムスンの広告がない」。IFAの会場には昔ながらの北玄関と南玄関があり、南玄関のすぐ隣にある新しい大型展示場の「シティキューブ」の壁面には、いつもなら韓国のサムスン電子が幅約100メートルもの巨大な広告を掲げていた。
ところが今年はその場所を陣取っていたのは「世界ナンバー1 スマート家電ブランド」と書いた中国の家電大手、美的集団(Midea=ミデア)の広告だった。南玄関から訪れた来場者は、まず誰もがその変化に驚いた。
シティキューブがオープンしたのは10年前の2014年だが、最初から1フロアすべてをサムスンが貸し切りで使い始め、その展示場の壁面にサムスンの巨大広告があるのは極めて自然な形だった。サムスンは今年も同様に1フロアすべてを使用していたが、そこに別のメーカーが広告を掲げるのは、喧嘩を売っているようなものだった。
見本市を主催するIFAマネジメントのライフ・リントナー最高経営責任者(CEO)は「いつも同じ場所に同じ会社の広告があるわけではない」と話すが、この巨大広告の〝選手交代〟は、10年間に起きた韓国メーカーと中国メーカーの勢力図の変化にも関係があるといえよう。
中国にはほかに海爾集団(Haier=ハイアール)や海信集団(Hisense=ハイセンス)、TCL科技集団といった家電メーカーがあり、最近は日本国内でもこうしたブランドを見かけるようになった。その意味ではミデアはまだ日本人には馴染みが薄いが、実は東芝の白物家電事業を買収したのはほかならぬミデアだ。
ミデアはドイツの産業用ロボット大手、KUKA(クカ)を買収して産業機器やロボット市場にも進出するなど、売上規模こそサムスンには劣るが、世界の家電・産業機器市場で急速に存在感を高めている。
