電動自転車や電動オートバイ「e-モビリティ」
もうひとつ今回のIFAで注目された新しい技術が自転車やオートバイ、スーツケースなどを電気で動かす「e-モビリティ」だ。
シャープは3年前から「SHARP」ブランドでe-bike(電動自転車)の販売に乗り出しているが、今回のIFAでは久しぶりに記者会見を開き、新たに27モデルを投入すると発表した。電動自転車はシャープが手掛けてきた家電分野と少し離れるが、「e-bikeへの需要は確実に高まっている」と同社ドイツ法人のサーシャ・ランゲ販売担当副社長は指摘する。
米国ではハーレー・ダビッドソンが19年に電動型の大型オートバイを発表し話題を呼んだが、その流れは欧州にも飛び火しており、ドイツでも電動オートバイの愛好会などが増えている。「地球環境を考えると今後はオートバイも電動化すべきだ」とスイスの電動バイクベンチャー企業、Hush Cycles(ハッシュ・サイクルズ)のアレックス・ストルダーCEOは強調する。
IFAの会場には国内外の様々なメーカーの電動オートバイが展示され、欧州におけるe-モビリティの浸透をうかがわせた。
特にユニークなのが電動で走るスーツケースで、人間がまたがって電動バイクのように乗れる代物だ。この分野では中国系メーカーが多数出展しており、香港がベースの専門メーカー、AOTOS(オートス)は実際に来場者を電動スーツケースに試乗させて、話題を呼んでいた。
ほかにも全自動芝刈機の米YARBO(ヤーボ)や、太陽光パネルの自動掃除機を手掛ける米Mamibot(マミボット)など様々な自律型の電動ロボットが会場で人気を博していた。
カメラ・レンズメーカーのシグマが初出展
今年の日本からの出展としては、パナソニックやシャープのほかにカメラ・レンズメーカーのシグマ(川崎市)が初めてIFAのクリエーター向け共同ブースにコーナーを設けた。発売したばかりのアルミ削り出しのカメラ「Sigma BF」を展示し、会場で関心を呼んだ。
ベンチャー企業が集まる「IFA Next」の展示会場には東京都のベンチャー支援組織「SusHi Tech(スシテック) TOKYO」や、高齢者向けに「ミライスピーカー」を販売するサウンドファン(東京都中央区)、バッテリー製品などを手掛けるpower電器(大阪市)などが出展。一般会場にはIFA常連のクリエイティブテクノロジー(川崎市)がブースを設け、静電気で床を掃除する「Esclean(イースクリーン)」を展示して大手企業の分まで日本の技術力をアピールしていた。
今回のIFAには世界49カ国から約1900社が出展、来場者数は昨年を上回る約22万人を数えた。IFAは1月に米ラスベガスで開かれるIT見本市の「CES」や3月にスペインのバルセロナで開かれるモバイル技術見本市の「Mobile World Congress(MWC)」と並び、世界のデジタル市場の将来を占う見本市だけに、そこから日本メーカーが消えていくのは極めて残念でならない。
コロナ禍で日本の大手メーカーは出不精になってしまった。「来年にはまた戻ってくるに違いない」と主催者のリントナーCEOは期待を込めて話すものの、そうでなければ世界を席巻した日本の技術力はどこかで忘れ去られてしまいかねないといえる。

