2025年12月5日(金)

WEDGE REPORT

2025年9月22日

テレビの映像技術や生成AI…新技術に大きな関心

 IFAでは様々な新技術が披露されるが、今回特に注目されたのはテレビの映像表示技術やスマートテレビの基本ソフト(OS)技術、家電製品への生成AI(人工知能)技術の活用、それに新しい商品分野である「e-モビリティ」などだった。

 テレビの映像技術はかつてシャープが世界の液晶技術を牽引し、パナソニックがプラズマディスプレー技術を主導したが、そうした映像技術の開発競争は日本メーカーから韓国と中国メーカーの手に移ってしまった。世界のテレビ市場では、コントラストが高く、黒がきれいに映る自発光型のOLED(有機EL)技術でLGが優位に立つが、その構図を崩そうとライバル企業が別の技術で競争を挑んでいる。

 サムスンは量子ドット(QD)と呼ばれるナノサイズの半導体粒子を液晶パネルとバックライトの間に挟むことで輝度を高めた「QLED」という技術を投入。今回はバックライトのLED(発光ダイオード)をさらに微細化し、RGB(赤・緑・青)の3色を表現できるようにした「MicroRGB」と名付けた技術を発表した。

ハイセンスの「RGB-MiniLED」テレビの展示

 中国メーカーではハイアールやTCLがサムスンと同じ「QLED」の技術をベースに、バックライトのLEDを小型化することで輝度とコントラストを高めた「QD-MiniLED」という技術を投入している。ハイセンスはサムスンの「MicroRGB」と同様にバックライトのLEDにRGBを表現させることで輝度とコントラストを高めた「RGBーMiniLED」という新しい技術を開発して、今回のIFAでそれを使った「U7S Pro」という116インチの大型テレビを発表した。

欧州ではスマートテレビの基本ソフト開発競争が激化

 欧州では様々な放送チャンネルや配信サービスから自分の好きな映像コンテンツを自由に選んで視聴できるスマートテレビ向けのOS開発競争も激化している。サムスンが2007年にインターネット接続用の「Widget(ウィジェット=簡易アプリ)をテレビに搭載したのがスマートテレビ誕生のきっかけだが、その後、ソニーが米グーグルと組んで「Google TV」を発表するなど、当初は韓国と日本の家電メーカーがスマートテレビの技術をリードした。

様々なスマートテレビOSを紹介するトルコのベステルのブース

 ところが米アマゾン・ドット・コムが「fire(ファイア)TV」を発表し、米配信技術会社の「Roku TV」や「TiVo」などがこの分野に参戦すると、ハイセンスは「VIDAA(ヴィダ)」と名付けた独自OSで対抗、IFAを舞台にスマートテレビの様々な技術競争が展開されている。

 一方、家電分野へのAIの活用はアマゾンが14年に発表した音声アシスタントの「Alexa(アレクサ)」がきっかけで、この分野で先行したのはサムスンとLGだ。サムスンは「Bixby(ビクスビー)」という音声アシスタントを投入、LGは「ThinQ(シンキュー)」というAIブランドを起ち上げ、様々な家電製品を音声で操作できるようにした。米オープンAIが22年に生成AIの「ChatGPT」を発表すると、その勢いは増し、AIエージェント技術を活用したAIロボットも登場した。

TCLがIFAで展示したAIロボット「AiMe(アイミー)」

 サムスンは「Ballie(ボーリー)」、LGは「CLOi(クロイ)」というAIロボットを投入し、ハイセンスは「Ai Me(アイミー)」と名付けたAIロボットのプロトタイプをIFAの会場で一般公開し、来年8月から発売するという。


新着記事

»もっと見る