スペインのバルセロナで3月初め、世界最大の携帯技術見本市「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)2025」が開かれた。コロナ禍などによりMWCにはしばらく足が遠のいていたが、日本企業の海外展開の状況を確認しようと久しぶりに現地を訪れた。世界初の携帯インターネットサービス「i-mode」が登場したころのMWCでは日本の通信会社やコンテンツ会社が脚光を浴びたものだが、最近は欧州家電見本市の「IFA」や米IT見本市の「CES」でも日本企業の勢いがあまり感じられない。MWCもかつての勢いには及ばないが、今回はようやく日本企業がまた元気を取り戻してきたという印象を得た。
中国の通信機器メーカーが
会場をリード
会場を訪れてまず驚いたのは中国の大手通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)の健在ぶりだ。バルセロナ市内にある展示場は大きな8つのホールからなるが、ファーウェイはこのホールをほぼひとつ占拠しており、同社のサブブランドから独立した携帯端末メーカー、Honor(オナー)も別のホールで大きなブースを構えていた。米中間のハイテク摩擦により米国の携帯市場におけるファーウェイの存在感は薄くなったが、欧州市場では今もゆるぎない地位を築いていると実感した。
ファーウェイに次ぐ中国の大手通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)も巨大なブースを構え、携帯通信分野への人工知能(AI)の導入を訴えていた。ZTEは韓国サムスン電子や米グーグルなどを追って、二つ折りスマートフォンなどを「nubia(ヌビア)」のブランドで日本にも展開している。会場にはそうした同社の新しい携帯端末が多数並び、米国政府による対中制裁から立ち直っている様子がうかがえた。
シャオミはスポーツカー型の
電気自動車を出展
さらに来場者の目を引いたのが新興携帯端末メーカーの小米(シャオミ)だ。同社は携帯端末に加え、スポーツカー型の電気自動車(EV)の製造販売に参入したことで知られる。会場にはブルーとイエローの新型EV「Xiaomi (シャオミ)SU7」シリーズを2台展示し、ブースの入口には「シャオミ」ブランドを説明する「Human x Car x Home」という大きなロゴを掲げていた。携帯端末メーカーから総合家電自動車メーカーに脱皮する戦略の表明にほかならない。米国の市場だけを見ていては世界のハイテク市場における地政学的な変化を見誤りかねないと会場を訪れ改めて感じた。
その意味では欧米のハイテク市場で地歩を固めているのがLenovo(レノボ)だ。北京の国営研究機関出身のメンバーが設立した同社はもともと「聯想集団」と言い、ブランドも「Legend(レジェンド)」を名乗っていた。しかし米IBMからパソコン事業を買収し海外展開に乗り出したあたりから、ブランド名も商標権争いが起きにくい「Lenovo」に改めた。さらに米モトローラの携帯端末事業も買収し、米国や日本のパソコン・携帯端末市場でも完全に受け入れられている。同社のブースには携帯端末だけでなく、折り畳み式モニターが3画面ある最新のノートパソコンなどを展示していた。