京セラが9年ぶり出展し
「オープンRAN」を推進
では日本の通信会社や通信機器メーカーの存在感はどうだったのか。コロナ禍で日本企業はこれまで海外展開に消極的な姿勢を取っており、ハイテク見本市でも主役の座を韓国や中国の企業に奪われてしまったが、今回のMWCではようやく復活の兆しを見せてきたといえる。例えば、京セラは9年ぶりにMWCに出展、同社が今年3月に海外の通信機器ベンダー6社と設立した5G(第5世代移動通信システム)のオープンRAN推進組織「O-RU Alliance(アライアンス)」を発表していた。
異なる通信機器会社の装置を相互接続できるオープンRANについてはNTTドコモなども「O-RAN Alliance」を推進しているが、京セラは独自に台湾のアルファ・ネットワークスやマイクロエレクトロニクス・テクノロジー、WNC、韓国のHFRやSOLiD、インドのVVDNの通信機器6社を巻き込み、新たに「O-RUアライアンス」をアジア中心に展開していこうとしている。
NICTがテラヘルツ波による
大容量データ伝送を実現
日本の総務省は国内通信機器メーカーなど15社を集めた「Japan Pavilion(ジャパン・パビリオン)」をMWCに出展しているが、これまでパビリオン内に展示していた政府系の情報通信研究機構(NICT)も今年はパビリオンの隣に単独でブースを開設。テラヘルツ波を使い、空中でドローン間の大容量ファイル送受信を促す技術や、ロボットカーとドローンとの間のすれ違い大容量データ転送技術などを展示した。
富士通もAIとネットワークの融合を掲げ、会場の入口から遠くない目立つ場所にしっかりとブースを置いていた。無線ネットワークにAIを活用した「AI-RANソリューション」や、「AI for Network」の名のもとにネットワークの障害時の復旧や運用・保守管理などにAI技術を積極的に活用していこうとしている。ライバルのNECもこれまで富士通と同様にブースを構えてきたが、オープンRANの海外展開を目指す「OREX SAI」をNTTドコモと昨年春に合弁で設立したことから、「NEC単独で出展する必要がなくなった」(同社幹部)として今回は出展を見送った。
高橋KDDI社長が基調講演し
「ローソン」との協業訴え
日本の通信会社ではKDDIの髙橋誠社長が初めてMWCの基調講演に立ち、災害時における米衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」の活用や、同社が買収したコンビニエンスストア「ローソン」との事業連携を唱えた。髙橋社長は「KDDIには3100万人の契約者がおり、ローソンには1万4600店の店舗がある。両者のタッチポイントを融合することで新たなビジネス展開が期待できる」と述べ、来場者の関心を呼んだ。KDDIは新設の複合ビル「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」に本社を今春移転する計画で、「1万3000人の従業員によって様々な実験をしたい」という。
KDDIのブースにもローソンの屋上から離着陸するドローンなどを展示し、緊急時などに備えたコンビニエンスストアと携帯通信サービスとの連携を訴えた。KDDIは5Gの高速通信を可能にする「Sub6」の基地局を全国に3万9000局保有しており、そうした基地局をローソンにも配備していくことで、「緊急時だけでなく平常時においてもコンビニエンスストアを様々な情報サービスの拠点にできる」というわけだ。