日本政府が保有するNTT株の売却について、自民党が本格的な検討に乗り出しています。そのNTTは、光通信技術を使った次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を推進しています。「Wedge」2023年8月号に掲載されているIOWNに関する記事の内容を一部、限定公開いたします。
米オープンAIが開発した生成AI「ChatGPT」が世界中で大きな話題を呼んでいる。AIは社会や経済のあり方を激変させると考えられるが、一方でAIによる大量の電力消費が新たなリスクとなっている。
科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センターの予測によると、2030年の日本のIT(情報技術)分野の電力消費量は16年の36倍にあたる1480テラワット時に達し、現在の年間の全電力消費量の1.5倍になるという。メタバースなどの広がりで情報が2次元から3次元になると、データ量は一気に30倍にも増える。
さらに「ChatGPT」のような大規模言語モデルになると、学習や推論に必要な大量のデータを読み込むのに原子力発電所1基1時間分の発電容量を消費するといわれる。そうしたAI時代に対応するには、情報通信基盤そのものの見直しが必要になろう。
そこでIT分野における電力消費を抑制する新技術として期待されるのが、NTTが推進する次世代情報通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想」だ。
これまでコンピューターの演算処理は電気信号、通信は光技術を使ってきたが、IOWNでは演算から通信まで光で処理する「光電融合技術」をコアとして使う。電車に例えると、現在は新幹線で行っても途中で在来線に乗り換える必要があるが、IOWNは新幹線でそのまま目的地まで到達できるイメージだ。これにより消費電力は従来の100分の1、伝送容量は125倍、遅延は200分の1になるという。