また同文書は「台湾海峡の安全保障はアジアだけの問題ではなく、ドイツや欧州の安全保障にも影響を与える。現状を変更する場合には、全ての関係者の合意に基づき、平和的手段によってのみ行われるべき」と釘を刺した。ドイツ政府はこの中で「EUの『一つの中国政策』の枠の中で、台湾が実務面で国際機関の活動に参加することを支援する」とも述べている。
また、同文書の55ページで「ロシアのウクライナ侵攻は、国連憲章に違反する行為だ。しかし中国は、ウクライナの国家としての主権性を十分に尊重していない。さらに中国は、ロシアの北大西洋条約機構(NATO)批判に賛成している。こうした態度は、欧州の安全保障にも直接影響を与える」と述べ、中国のロシア寄りの姿勢を批判した。
批判はするも、対話は切らさない
ワーデフール外相も、台湾情勢やウクライナ問題に言及するものの、中国政府を激怒させないようオブラートに包んでいる。希土や貿易不均衡をめぐる交渉を続けるために、対話のチャンネルが切断されることを避けようとしている。
中国との交渉では、欧州の手持ちのカードは少ない。パリのEU安全保障研究所(EUISS)で中国問題を担当するティム・リューリヒ研究員は、「中国が競争相手として最も重視しているのは米国とグローバル・サウスだ。中国は欧州を重視していない。欧州は希土などに関して、中国への依存度を高める一方であり、中国との交渉では強い立場にない」と指摘する。
ドイツ政府はこれからも、対話のチャンネルの維持と、台湾・ウクライナ問題での欧州の立場の主張の間で、デリケートで困難な綱渡りを強いられるだろう。
