サウジアラビアは、現在、数年前に比べてより不安定化している。サウジの周辺で続いている紛争はムハンマド皇太子のプランを失敗させ得る。
サウジアラビア周辺の紛争は拡大している。停戦合意が崩壊した後、イスラエルはガザに対して激しい攻撃をしており、イエメンでは米国がイランの支援するフーシ派に対して爆撃を続けている。
そして、トランプ大統領はイランに対して核開発問題に合意しないと軍事力を行使すると繰り返し脅かしている。トランプ大統領がイランを攻撃するという脅かしは、サウジアラビアに対して思わぬ痛手をもたらすかも知れないし、中東地域をより不安定にするかも知れない、とワシントンのアラブ湾岸研究所のイビッシュ氏は言う。
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第1期、第2期ともに最初の外遊先
第1期トランプ政権時に同大統領は、カショギ事件(サウジの体制に批判的なカショギ記者をトルコ・イスタンブールのサウジ領事館で殺害)を隠蔽した見返りにムハンマド皇太子が大統領の義理の息子の会社に大金を投資したと言われている。しかし、どうしてトランプ大統領が今回もムハンマド皇太子を重視しているのかについては明確ではない。
第2期トランプ政権が発足して以来、同政権は米・ロシア高官協議や米・ウクライナ協議等の重要な協議を、何ら合理的な理由が無いのにも関わらずわざわざサウジアラビアで行っていることは奇異だが、利に聡いトランプ大統領が意図的にムハンマド皇太子を喜ばせ、そのプライドを満足させているのは間違いないだろう。因みにトランプ第2期政権の最初の外遊先はサウジアラビアだが、第1期政権でも最初の外遊先はサウジアラビアだった。
トランプ大統領がムハンマド皇太子におもねっている大きな理由の一つは、原油価格を引き下げることにあるのではないかと想像される。ガソリン価格の安定は米大統領にとり大きな問題であり、バイデン前大統領は、中間選挙の前にロシアのウクライナ侵攻後高止まりしていた原油価格の引き下げのため、カショギ事件に絡んで「排除する」と宣言していたムハンマド皇太子に原油の増産を要請するためにサウジアラビアにまで会いに行かざるを得なかった。
