2024年5月6日(月)

MANGAの道は世界に通ず

2023年7月29日

「死の組」と称された、絶体絶命のグループEから、優勝候補のドイツ・スペインを撃破して1位突破する――そんな劇的なシンデレラストーリーを、2022年W杯で日本が体験することになるとは、誰しも想像しなかったことだろう。

 惜しくも、決勝トーナメントでクロアチアに惜敗したが、この快進撃にはサポーターの誰もが称賛を送った。そしてタイミングを同じくし、漫画業界でも激震が起こっていた。『ブルーロック』(金城宗幸、ノ村優介、講談社)という作品である。

 日本をW杯優勝に導くべく、世界最強のストライカーを養成する青い監獄「ブルーロック」が立ち上げられ、ユース世代のFW300人から過酷な選抜が行われていく、というのが全体のストーリーだ。

 実在の選手名を挙げ、「そいつらってW杯優勝してなくない? じゃあカスでしょ」などという過激な煽りから始まるなど、大いに物議を醸しながらも、連載は人気を博していった。

エゴを貫き、自らがゴールを決めること

「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない」など、日本人には耳障りが悪いが、本質的なメッセージが作品を通して伝えられていく。

 結局のところFWに求められているものとは、エゴを貫き、自らがゴールを決めることに執着できるかどうかなのだ。

 現実の2022年W杯では、こうした素養が日本の選手に欠けているという下馬評が覆され、積極的に若手選手がゴールを奪っていく姿を見ることができた。今回の代表選手の多くは、既に欧州のトップリーグで活躍している選手ばかりであり、「若い頃から世界に出ている」ことの重要性が改めて感じられる機会にもなったわけだ。

 通常時に自分達がクラブチームで戦っている相手たち……何なら所属するチームの後輩たちとすら、試合をすることになるわけで、「W杯という大舞台」で舞い上がらずに常に冷静で、最適解のプレイを選択し続けられる日本選手たちの姿は、20年前のそれとは格別だったと感じられる。

 さて、こうした現実と『ブルーロック』は大いにリンクしており、W杯の放映中にも話題となった。「ブルーロック方式で日本が勝ち上がった!」などという声も数多く聞かれたものだ。

 しかしここでは、同作品から読み取れる、ビジネスに活きる別のエッセンスを掴み取ってみたい。


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