2024年5月19日(日)

MANGAの道は世界に通ず

2023年7月29日

「推し」キャラクターを見つけて、一喜一憂できる構造

 なお、同作品は上述のように、カップリングが成立しては離れ……を繰り返すという構造になっており、「秀逸なBL作品」とも見ることができる。(BL=男性同士の性愛を描いたもので、90年代半ばから徐々に人気を博す。2010年代からは、LGBTという概念の一般化に伴い、大衆向け作品においても多く描かれることとなった。代表例:『きのう何食べた?』〈よしながふみ、講談社〉)

 決して露骨な表現がなくても、「あの子とあの子が仲良くなった」という状況を、カップリングが成立した、として女性読者が夢想して楽しむことができる。

 さらには、主人公が初期ライバルの御影玲王(みかげれお)から、相棒の凪誠士郎(なぎせいしろう)を奪いカップリングを成立させるという、疑似的な「寝取り」の体験ができるという演出にも事欠かない。

 こうしたストーリーの中で、女性読者は自らの「推し」キャラクターを見つけて、一喜一憂していくことができるという構造になっているのだ。

 BLは市場規模として既に数百億円、推し活については既に6000億円を超える市場規模になっていると言われている。

 女性の晩婚化と単身化が進み、行き場を失った「母性」の充足先としてこうした市場が成立しているというのが筆者の見方だが、今後も現代型マーケティングのキーワードになるといえるだろう。

 なお筆者が代表を務める企業グループにおいて、『ブルーロック』のポップアップイベントを開催したところ、開始時には朝から200人以上のお客様がお並びになるなど、大盛況の賑わいを見ることができた。初日だけで利用客数は1000人弱を記録している。その大部分、99%は女性のお客様である。

 これほどまでに、現代型のシンデレラストーリーは女性の心を打つものであり、消費者心理を捉えるのに重要なヒントが隠されているのが、『ブルーロック』という作品だといえるだろう。

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る