アメリカのドナルド・トランプ前大統領によるソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」の株価が15日、急騰した。13日の暗殺未遂事件を受け、11月の米大統領選で前大統領が勝利する可能性が高まったとの見方が強まったためだと、複数のアナリストが指摘している。
トゥルース・ソーシャルの運営会社トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループの株価は15日、31％ほど上昇した。時間外取引では一時、前週末比約７０％上昇した。
複数のアナリストは、13日の暗殺未遂事件を受け、トランプ前大統領が11月の大統領選で勝利する可能性が高まったとの見方が強まったことが、反映されたと指摘している。
前大統領は13日、東部ペンシルヴェニア州バトラーで開いた支援者集会で演説中に撃たれ、右耳を負傷した。このすぐあとに、警護を担当するシークレットサービスのスナイパーが容疑者を射殺した。
「私は死んでいるはずだった。ここにはいないはずだった」と、トランプ前大統領は事件後のインタビューで語った。
アメリカの大富豪イーロン・マスク氏らは、事件後にトランプ前大統領への支持を正式に表明している。
「選挙が激化するにつれ、より多くの人々が自分たちの意見を表明するために、またトランプ前大統領とその陣営の投稿をいち早く見るために、ソーシャルメディアにアクセスするようになると、投資家たちは賭けている」と、ウィスコンシン州投資委員会の上場企業担当責任者スーザン・シュミット氏は述べた。
一方で、ニューヨークの金融街ウォール・ストリートのアナリスト、カリー・リーヒ氏は、これは「事業よりも選挙に関する」取引だとし、トゥルース・ソーシャルは事業としての成長に苦戦していると指摘した。
「（トランプ前大統領が）当選する可能性が高まれば、彼の会社の価値も高まるのか？ そう考えるトレーダーもいるだろう」
「バイデン氏が選挙戦から離脱すれば、トゥルース・ショーシャルの価値は下がるだろう。私はそう確信している」
トランプ前大統領は2020年の米大統領選での敗北後、連邦議会議事堂の襲撃を扇動したとしてツイッター（現X）やフェイスブックといった主要ソーシャル・プラットフォームから非難され、これらの使用を一時禁止された。トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループはそうした中で前大統領によって設立された。
トゥルース・ソーシャルはX（旧ツイッター）とほぼ同じ形式を踏襲している。アクティブユーザーは約200万人とされるが、その数は情報源によってまちまちだ。
トランプ前大統領はトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループの主要株主。
現在の株価は約40ドルで、トランプ前大統領が保有する株式の価値は約50億ドル（約8000億円）となっている。これは、アナリストが同社の売上と事業内容から妥当と考える額をはるかに上回っている。
選挙などめぐり株価が変動
トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループの株価は、前大統領の身に起きる出来事や選挙の勝敗にしばしば連動して変動することで知られる。
同社の前身会社の株価は、前大統領が予備選で共和党の対抗馬を破った後の1月に上昇し始めた。
トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループが3月に米ナスダック市場に上場すると、株価はさらに高騰した。
しかし、前大統領が不倫相手への「口止め料」支払いをめぐり業務記録に虚偽記載をしたとされる事件の裁判が4月に始まり、翌月に有罪評決が出されると、株価は下落した。
現在の株価は3月時点の水準を下回っている。
「現在の『価格』を支えるような基本的業績は同社にはないが、買い手はおそらく、選挙を控える前大統領の富を支えるために株を購入する政治的な支持者だろう」と、米ヘッジファンド「グレート・ヒル・キャピタル」のトーマス・J・ヘイズ会長は指摘する。
トランプ前大統領は13日に演説会場で、暗殺未遂事件からの生還を示すために反抗的にこぶしを突き上げた。この様子に、前大統領を支持する群衆からは大歓声が上がった。
前大統領はその後、自分は「運か神によって」救われたと感じたと、米メディアに語った。
「何よりすごかったのは、自分がたまたま（頭を）振っただけでなく、ちょどいいタイミングで、ちょうどいい分だけ振ったことだ」と前大統領は強調し、耳をかすめた銃弾は自分を簡単に殺すことができたと付け加えた。
この事件では集会参加者の1人が死亡し、2人が重傷を負った。
トマス・マシュー・クルックス容疑者は現場で射殺された。犯行動機はいまも分かっていない。
