Economist誌6月20日号が、「中露のゾッとする北極政策」(China and Russia have chilling plans for the Arctic)という記事を掲げ、ロシアのウクライナ戦争への支援により、中国による北極海路開発に対する欧州の警戒が高まっており、開発は遅れ気味になっていると論じている。要旨は以下の通り。
北極圏のノルウェーの港キルケネスは将来重要な拠点になることを夢見ている。地球温暖化でこの港は中国から欧州への新航路の西端になる。
ウクライナ戦争が続く中、この野望は今は非現実的で、中国の対露支援は同国の北極シルクロード計画への不信を強めているが、中国は引き続き北極地域の豊富な天然資源から裨益する機会を窺がっている。
中国の北極シルクロード計画の実現時期は不明だ。北極航路を使えば上海―ハンブルグは18日、スエズ運河経由の35日、フーシー派攻撃を避けた喜望峰経由の45日に比べ相当短く、素晴らしい考えだと思われた。
キルケネスは、中国からの貨物を他の船か鉄道に積み替え欧州市場に送ることを目論んでいる。最大の問題は欧州鉄道網との連結が無いことだ。50キロメートル(km)先のフィンランドとの間の鉄道建設の話はあったが、ウクライナ戦争発生以前からフィンランド政府はこの計画に冷たい。今や同国政府は、地政学的不安定性に鑑みロシア国境に近すぎる鉄道路線建設には反対だ。
西側政府は中国の北極圏での活動を長く心配してきたが、ウクライナ戦争は中国の全ての大プロジェクトへの西側の心配を強めた。中国は中立と言うが、ロシアとの無制限の友好関係を謳いロシアの防衛産業を支援している。
ウクライナ戦争は北極圏に領土を持つ8カ国の協議機関北極評議会の活動を凍結させた。中国は2013年に評議会にオブザーバー参加した。ロシア以外の評議会メンバーは今や全て北大西洋条約機構(NATO)加盟国で、中国は疎外感を感じているだろう。
中国の欲求不満は明白だ。年初、2人の中国人ロシア専門家が、ロシアが北方で弱体化していると指摘した。北極圏での元々の力関係が西側有利に変わりつつあり、中国のイメージが害される危険がある。これは北極問題への今後の中国の関与にマイナスだ。