2024年12月22日(日)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2024年7月16日

 単発のバイトをネットで求人するサービス「スポットワーク」は、2024年前半に一気に普及した。スタートアップ企業が開拓した働き方で、多くの場合は、空き時間を利用して最短1時間から働くことができる。言い方を変えれば「スキマバイト」というわけである。通常のアルバイトの場合、履歴書や面接などでの選考があるが、スポットワークでは多くの場合に応募すれば先着順で仕事が決まる。

スポットワークは、スーパーの陳列はじめ幅広い仕事に活用されている(maroke/gettyimages)

 また、法的な契約関係は業務委託ではなく、雇用契約となっている場合が多く、労働基準法により労働者は守られる。その内容は飲食店、コンビニなどのサービス業、更には倉庫作業、配送、引っ越し、オフィスワーク、清掃などさまざまだ。事務作業の場合もあるが、初心者でも対応可能な内容が主である。

 求人サービスによってアプリの設計は異なるが、働くエリアや時間帯、拘束時間などから検索することも可能で、個人の事情に合致した仕事をサーチすることが可能だ。気に入った仕事があれば、アプリから応募すると瞬時に仕事が確定する。給与は仕事が完了すれば、直後に振り込まれることが多い。こうした手続きの簡易さや空いた時間に収入を得られるという利便性の高さから、若者に広く活用され、最近では高齢者も利用する人が増えてきている。

 この種のスポットワークだが、ある意味では作業レベルの仕事の切り売りであるし、需給バランスということでは「買い手市場」でもあることから、下手をすると人件費のデフレを加速する危険性もある。では、日本経済の競争力回復にはマイナスかというと、必ずしもそうではない。大切なことは、これまで各業種、各企業が「企業文化」などといって自己流の進め方をしていた仕事について「誰でもできる標準化」が進むということだ。


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