日本では、いわゆる「5月病」の季節ということから、若者を中心とした相次ぐ退職が話題になっている。近年は退職代行というものも流行しているようだ。この退職代行に関して言えば、労働基準法の解釈としては期限の定めのない契約の場合に、労働者の側が辞職する際には特に条件はないし、辞表を出せば済むことになっている。
けれども、企業側としては早期退職を許すと、採用や研修のコストが無駄になるし、人事配置が崩れる。そこで見識のない企業の場合は「強引な引き止め」や「愚痴」が出る。そのような企業であれば、パワハラの横行する労働環境である場合も多く、場合によっては身を守るために退職するというのは正しいであろうし、暴言などの被害を避けて「代行サービス」を利用するケースについては、一概に非難はできない。
その他には、希望の職種に就けなかったという理由で退職するというケースも多いようだ。例えば、食品メーカーに就職した若者がいたとする。採用のプロセスで人事部から、商品開発に配属すると言われていたのに、実際は営業の辞令が出た。専用のキッチンで新しい商品を開発するための実験や調理をするような仕事を夢見ていたのに、実際は問屋やスーパーの本部を回って頭を下げたり、場合によっては利害の対立する状況で心理的負荷を背負う。そう考えると絶望しかない。そもそも人事が約束したのに裏切られたという思いもあるかもしれない。
本来は、商品開発で成功するには、市場を知る必要があり、そのためには問屋やスーパーなどへの営業経験は大切だ。けれども、就活生が企業や職場をイメージするというのは、どうしても消費者気分の延長で想像を巡らせるぐらいで、それ以上は難しいであろう。そんな中で、人事部の甘言を信じて入社したのに、それに裏切られたのであれば、激しく動揺するというのは理解してやらねばならないであろう。
問題は、そのような理由で「早期退職」してしまった場合の「その後」である。どうやって、転職を成功させるのかということが大切だ。
多くの若者は、より世評の高い企業だとか、より給与の高い企業に転職したがる。それは分からないでもない。だが、しっかりとしたキャリアを形成するには、もっと大切な点がある。それは「メンバーシップ型雇用」を目指すのか、「ジョブ型雇用」を目指すのかという問題だ。