2024年12月10日(火)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2024年5月14日

 中日を含めると10日間にも及ぶ大型連休となったゴールデンウィークが明け、なかなか頭が仕事モードに戻らない人もいるのではないだろうか。なかには、連休をきっかけに仕事への憂鬱感が増し、気分の落ち込みが激しくなるなどのいわゆる“5月病”に見舞われている人もいるかもしれない。
 ビジネスパーソンの誇りにかけて与えられた職務をまっとうすることは大切だが、その資本となる身体を壊してしまっては元も子もない。精神科・心療内科の医師は、仕事における精神状態の悪化に対し、どのように働きかけてくれるのだろうか?  2023年8月16日に掲載した『「職場のうつ」は診察室でなく、職場で起きている』を再掲する。

 「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているのだ。」

 『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年)の名セリフは、「職場のうつ」にもあてはまる。「職場のうつ」は、診察室で起きているのではない。職場で起きているのである。したがって、診察室で「治療」と称するごまかしを試みても、何の解決にもならない。

(tuaindeed/gettyimages)

 メンタルクリニックで行われていることは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(抗うつ薬)を出すか、休息・休職を勧めるか、癒しのカウンセリングを行うかであろう。

 しかし、「職場のうつ」は、セロトニン・リセプターで起きていない。職場で起きている。したがって、リセプターにおいて再取り込みを阻害しても何の意味もない。

 職場におけるうつの原因を取り除かなければ、解決にならない。薬が、職場の問題を取り除けるはずがない。

 同じことは、休息・休職にもいえる。抗うつ薬が「職場のうつ」の原因を除去しないのと同じく、休息・休職もまた、原因を除去しない。

 「職場のうつ」の原因は、職場にあるのだから、職場にもどれば、そこに原因が残っている。「職場のうつ」に抗うつ薬などごまかしにすぎないが、休息・休職も同じである。それらは、あくまで一時しのぎである。職場のストレスを除去しなければ、解決にならない。

 カウンセリングの場合、カウンセラーたちは「傾聴して、支持して、共感せよ」と教育されていて、職域に関連した教育を十分には受けていない。「職場のうつ」については、職域の問題に特化した助言・指示・指導が必要だが、カウンセラーは具体策の提示については消極的である。

 当事者からすれば、メンタルクリニックで出会う人々は、弥縫策しか講じない無力な存在にすぎない。皆、「どうする家康」状態で、手をこまねいているだけである。


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