2014年に日本創成会議・人口減少問題検討分科会により公表されたレポートは、多くの地方都市が人口減少によって「消滅可能性」があることを指摘し、物議を醸した。その結果、消滅可能性を指摘された自治体がさまざまな人口減少対策を検討することになった。
その10年後の2024年4月に、人口戦略会議から、先のレポートの続編ともいえる「令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート」が公表された。各自治体の人口流出を止めるための方策が若年者を奪い合うような様相を呈していることなど、14年のレポート以後の政策的動きに対する批判的検討と近年の変化について分析された。
新しいレポートでは、人口移動が可能な場合とそうでない場合のシナリオの下で、若年女性人口の減少率の高低により、「自立持続可能性自治体」「ブラックホール型自治体」「消滅可能性自治体」「その他の自治体」への分類が行われている。
レポートでは、日本全体の人口減少基調を変えるという目的に照らして自治体がゼロサムゲームのような取り組みを行うことの弊害を説きつつも、自治体を分類し、「消滅可能」や「ブラックホール」のような、ネガティブな印象を与える言葉でラベル付けしている。自治体が協力して対応する必要があるのであれば、こうした分類はむしろ控えるべきであるようにも思われる。
本稿では少子化といった国規模の現象に対して、自治体レベルでの議論を行うべきか、それとも国レベルの議論を行うべきか、こうした議論を行う際に留意すべき点は何かを考察してみたい。