厚生労働省が人口動態統計を発表し、2023年の「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数)が1.20と、統計がある1947年以降過去最低となった。歯止めがかからない少子化に何ができるのか。Wedge2023年8月号の特集「日本の少子化対策 異次元よりも「本音」の議論を」では、少子化の要因をデータから分析している。特集内の記事を再掲する。(数字は掲載当時のもの)
さまざまな要因が絡まって起きている少子化。だが、巷でささやかれている原因の中には古い認識や誤った認識もある。まずはデータから少子化を正しく捉えよう。
Q1 2022年の合計特殊出生率は1.26となり、05年に並び、過去最低となりました。また、22年に生まれた赤ちゃんは77万人となり統計開始以来、初めて80万人を割り込みました。なぜ日本では少子化が急速に進行したのでしょうか。
A1 世間では「若い人の価値観の変化や娯楽の多様化が少子化の原因」と考える人も多いかもしれませんが、日本の少子化の最大の要因は「未婚化」にあります。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、第二次ベビーブーム以降、結婚した夫婦が持つ子どもの数は減少傾向にはありますが、1970年代から2.0人前後でほぼ横ばいです。その一方で、未婚者の数は過去40年弱で大幅に増加しており、1980年から2020年で生涯未婚率(50歳時点での未婚割合)は女性で4.45%から17.81%に、男性ではなんと、2.6%から28.25%にまで増えています。もはや男性は4人に1人以上が〝生涯未婚〟という時代です。夫婦が持つ子どもの数が変わらないのに少子化が止まらない理由は、この「未婚化」の進行にあるといえます。
「異次元の少子化対策」はその大半が既に結婚した夫婦を対象としていますが、何らかの形で、未婚率の低減を図らなければ、出生率の増加にはつながらないでしょう。また、今後さらに妊娠適齢期の女性の人口が減少していくことを考えれば、この問題は今から5年、10年が勝負であるといえます。日本の少子化問題に残された時間は極めて少ないことを、国民一人ひとりが認識する必要があります。