2024年4月21日(日)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年7月30日

(イラストレーション・藤田 翔)  

 現代の若者はどんな恋愛模様を繰り広げているのだろうか。都内に住む若者たちの声から浮かび上がってくることとは?

CASE 1 Aさん(男性/36歳/既婚/建設)
昔の手法は参考にならない
体験談から学んだ恋愛の流れ

 結婚相談所を介して同い年の女性と今年、結婚しました。本格的に婚活を始めたのは2年前です。それまでは仕事で東京~大阪間を往復する日々で忙しく、とても婚活をするような時間はありませんでした。仕事が落ち着きはじめた頃、1人暮らしの家に帰るたびに話し相手がいない寂しさを感じて婚活を始めました。職場は男性ばかりで出会いもなく、マッチングアプリに対しては怖いという印象もあったので、利用料金が多少高くても安心感がある結婚相談所オーネットに登録することにしました。
 職場の先輩たちと恋愛の話をしたりもしますが、彼らから聞く、いわゆる昭和の恋愛は「居酒屋にかわいい子がいたら連絡先を紙に書いて渡す」とか「何度も会いに行ってアプローチをする」とか、今の時代にそんなことをしたら、SNS上で晒されたり、下手したら通報されかねないものばかりで、正直、ほとんど参考にはなりませんでした。
 オーネットでは、成婚した人たちがどのようなデートをしたりどうやってアプローチをしたかなど、成婚までの道のりを体験談として見ることができました。登録をした後も、何から始めていいか分からなかった私にとってはとても参考になり、ありがたかったです。
CASE 2 Bさん(女性/31歳/未婚・パートナーなし/イベント・企画)
出会いがあっても
自分から求めないと始まらない

 元々は福岡県で幼稚園教諭をしていましたが、当時付き合っていた彼が東京都在住だったため、27歳の時に転職・上京をして同棲を始めました。結婚の話もありましたが、結局は価値観の違いから、29歳の時にお別れをしました。振り返ると「その人と結婚したい」というより「適齢期だから」という思いが強かったように思います。
 今はパートナーはいませんが、いつかは結婚したいと思っています。マッチングアプリも「20代のうちに……」と1度はやってみましたが、人間性ではなく、どうしても顔で見てしまうと感じてやめました。
 今の仕事は、出会い自体は多いですし、いい人がいたらお付き合いもしたいです。でも、「今の時代、ハラスメントの観点もあるし、周囲から『彼氏いる?』とは聞けないよ」と先輩から言われ、ハッとしました。今は自分から彼氏がほしいということを積極的に発信するようにしています。
CASE 3 Cさん(女性/26歳/未婚・パートナーなし/出版)
コロナ禍で変わった価値観
自立した男性と結婚したい

 2年前に1年半ほどお付き合いしていた人と別れて以来、パートナーはいません。その彼とは結婚も考えていましたが、当時、私も彼も旅行会社に勤めていたこともあって、コロナ禍でいろいろと考えるようになりました。結婚となるとお金も必要ですが、今は自分のやりたいことや成長を優先したいと思い、今の仕事に転職しました。
 その後、彼とはすれ違いによって別れてしまいましたが、結婚はいつかはしたいですし、恋愛がうまくいくと仕事もうまくいくタイプなので良い人がいれば付き合いたいです。一人っ子ということもあってか、親からは安定した真面目な人との結婚を望まれていますが、コロナ禍での価値観の変化もあり、自分のやりたいことのために努力している人に魅力を感じるようになりました。そういう人は大企業よりもベンチャー企業に多い気がするので、親の理想の相手ではないんだろうなとも思います。
CASE 4 Dさん(男性/34歳/既婚/広告・イベント)、Eさん(女性/34歳/既婚/デザイン)
大事なのは会った人数でなく
タイミングとフィーリング

Dさん 転勤の多い仕事から転職したことがきっかけで去年の10月頃から婚活を始めました。今振り返ると新型コロナが落ち着きはじめたタイミングだったことも影響していたかもしれませんが、当時はとにかく「寂しい」という気持ちがありました。
 結婚相談所に登録はしたものの、絶対に結婚をしたいというわけではなく、お金も自分で稼げばいいと思っていたので、お相手にはストレスなく過ごせる居心地の良さを求めていました。Eさんは登録時に紹介された女性のうちの一人で、まだ他の女性ともほとんどやりとりをしていない状態でしたが、会ってすぐ心地良さを感じ、この人とずっと一緒にいたいと思いました。
Eさん 日々の生活の中で出会いの場がなく、去年の8月頃にオーネットに登録をして、婚活を始めました。あまり無駄なことに力を使いたくない性格なので、結婚以外を目的とする人も登録をしているマッチングアプリよりも結婚相談所を選びました。
 私はまずはいろいろな人と会ってみたかったので、登録してすぐは毎週のようにイベントに参加しました。いろいろな人と会う中で、年齢の近さだったり、同じ目線で会話できることだったり、自分の中のモノサシが定まっていったように思います。
CASE 5 Fさん(男性/29歳/既婚/物流)
アプリで出会って半年で結婚
海外駐在の内示も後押しに

 妻との出会いはマッチングアプリです。29歳になってすぐに登録をし、初めて妻とデートをしてから半年で、今年6月に入籍をしました。周りにもアプリを介して交際した人が何人もいたのでアプリ自体に抵抗感はなかったです。 
 実は2年前にも一度アプリには登録をしていたのですが、その時はメッセージのやりとりなどが面倒になってすぐやめてしまいました。でも、29歳になり、もうすぐ30歳になることへの焦りや、職業柄、海外駐在があることもあり、将来を見据えて友人と一緒にアプリを再開しました。
 何人かと会ううちに、会社から海外駐在の時期が近いと言われ、交際後に渡米することを理解してくれる相手を探していました。妻とはデートでも一番波長が合ったので、海外駐在のことを話した上で交際を申し込み、結婚と渡米を前提にお付き合いを始めました。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、交際相手と「ネットで」知り合ったと答えた男性は2021年時点で11.9%、女性は17.9%にのぼる。
 結婚相談所大手のオーネット(東京都中央区)管理本部佐久間幸一氏は「アプリなどの登場で、婚活自体のハードルも下がりました。かつて結婚相談所は最終手段のような位置づけでしたが、今は『恋愛の学校』のように利用する人が増えています」と話す。
 こうしたトレンドの一方、「地方は奥手な人が多いのか、主体的に婚活できる人は限定的です。農業や漁業が盛んで男性比率の高い過疎地域では未婚女性と話す機会が何年もないという男性が多くいます」と愛媛県から委託を受けて結婚支援を行う、えひめ結婚支援センターの岩丸裕建氏は指摘する。
 だが、08年開設の同センターを利用して誕生したカップルは今年5月末時点で1万7969組、報告された成婚は1447組に上る。この実績を陰で支えるのが、登録者に1対1かつ、無償で〝おせっかい〟を焼くボランティア推進員だ。デートの服装や話し方だけでなく、「ここの夕日は何時に綺麗だから行くといい」といったアドバイスまでしてくれる。「安価な登録料でこうした時間や手間がかかるサポートまで提供できるのは自治体だからこそです。自治体が支援をすることで、婚活が〝特殊〟なことではないという啓発にもなります」と同氏は述べる。
 出会い方の選択肢も増え、若者の価値観も多様化していることは確かだ。だが、彼らの声から浮かび上がってくるのは結婚願望があっても、現代には現代特有の悩みや事情があるということ。未婚化は決して若者のワガママだけで進行しているわけではないのだ。

   
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Wedge 2023年8月号より
日本の少子化対策
日本の少子化対策

結婚・出産を望まないのは、若者・子育て世代のワガママであり、自分たちが選んでいること―。こう思う人がいるかもしれない。だが、経済情勢から雇用環境、価値観に至るまで、彼らを取り巻く「すべて」が、かつての時代と異なっている。少子化を反転させるため、岸田政権は異次元の少子化対策として経済支援の拡充を掲げるが、金額だけ次元の異なる政策を行っていても、少子化問題の解決にはつながらないだろう。もっと手前の段階でやるべきことがある。それは、若者や子育て世代の「本音」に耳を傾けることだ。


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