少子化という難題に向き合うためにも、男女が共に子どもを育て、共に働きやすい社会の実現は「待ったなし」である。
厚生労働省は2022年10月、子どもの出生後8週間以内に4週間までの育児休業を2回取得できる「産後パパ育休」を創設した。今年4月からは従業員1000人超の企業に男性の育休取得率を年1回公表することを義務付けるなど、育児と仕事の両立支援策を矢継ぎ早に打ち出している。
また、6月に閣議決定したこども未来戦略方針では、共働き・共育ての推進を強調。男性の育休取得率の目標を30年に85%と設定し、「産後パパ育休」については給付金の水準を現行の67%から8割程度へ引き上げるとした。
政府で制度にメスを入れられる部分は
少なくなっている
日本の子育て支援策は不十分─。
こうした印象を持つ読者は多いかもしれないが、日本の育休支援制度自体、国際的な評価は低くない。国連児童基金(ユニセフ)が21年に発表した報告書によると、日本の子育て支援策の総合順位は41カ国中21位にとどまるものの、男性向けの育休支援制度の項目に絞ると、1位に輝いている。
問題は民間企業で制度の利活用が進んでいないことだ。子育て政策に詳しい東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授は「日本の育休支援制度は充実してきており、政府で制度にメスを入れられる部分は少なくなっています。今後は企業がより大きな役割を担わなければ、政府がいくら予算をつぎこんでも少子化や出生率も改善しないでしょう」と指摘する。
企業にはいったい何ができるのか─。先進的な「制度」とそれを「運用」する企業の動きから、育児と仕事の両立支援のヒントを探った。