物価高騰などの影響で先送りされていた3年に1度の介護保険の見直しが7月10日に再開され、介護保険制度の持続可能性を高めるため、現役世代の社会保険料負担の限界も念頭に置きつつ、介護保険料や自己負担の引き上げなど高齢者の負担増をどうするかが議論されている。ただし、こうした高齢者の負担増は介護保険にとどまらずさまざまな分野に延焼してくだろう。
全世代型社会保障は全世代型大増税への道
これは、給付は高齢期に、負担は現役期に集中させて世界最悪水準の世代間格差を生む日本の社会保障制度を、高齢期の給付を削り現役期の負担を削減して解消するのではなく、高齢期の給付をそのままに現役期の給付を積み増す全世代型社会保障への転換によって解消を目指す政府の立場からは容易に想像できる結果である。筆者が常々「全世代型社会保障の構築は全世代型大増税とならざるを得ない」と主張する所以である。
まさにこの全世代社会保障こそが、最近、国民負担率が再び俄かにクローズアップされ、五公五民と騒がれる元凶に他ならない。
しばしば、自公連立政権でなければこんなにも国民負担率が上昇しなかったはずで、それでも自公連立政権を支持するのは「肉屋を応援する豚」との指摘もあるが、残念ながら政権交代が起こったとしても続いていくことは間違いない。たしかに、全世代型社会保障は麻生太郎内閣の時の安心社会実現会議に端を発しているものの、政権交代後の旧民主党政権時の「コンクリートから人へ」などでも引き続き支持されていた。社会保障のスリム化を公約とする政党が不在な限り、全世代型大増税は既定路線となる。