2024年12月9日(月)

日本の医療〝変革〟最前線

2023年5月30日

 コロナ禍で多くの問題点が指摘された「かかりつけ医機能」が法律として位置付けられた。5月12日の参議院本会議で「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(全世代社会法)が成立したからだ。

(takasuu/gettyimages)

 これは複数の法案をまとめて審議する「束ね法案」であったため、健康保険法の後期高齢者医療制度の見直しに焦点が当たっているが、医療法の改正も含まれており、かかりつけ医機能について定義された。ところが、その内容を見ると、当初の方針とは大きく違うものに化けてしまった。

審議会の意見書とは異なる法改正文

 患者が「私のかかりつけ医」と思っていた診療所などで、「コロナウイルスに罹患した可能性のある発熱患者は診ません」と診療拒否が起きた。あるいはワクチン接種時に「かかりつけ患者さんと認定した人しか受け付けません」などと追い返されることもあった。

 こうした医療現場の不祥事が続出したことで、かかりつけ医の役割を見直すことになり、昨夏以来、国の審議会で検討してきた。

 その結果、かかりつけ医の制度上の位置づけを、初めて法律に明記することになった。どのように明記するかは、厚生労働省社会保障審議会医療部会が12月28日にまとめた意見書に記した。

 「医療法第6条において、国民は『医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない』こととされていることを踏まえ、その選択に資するべく『かかりつけ医機能』の定義を法定化する」としたうえで、「現行の医療法施行規則を踏まえた内容とする」と提言した。

 その施行規則(厚労省令)には、かかりつけ医の機能を「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う」とある。2019年3月に決められた。

 ところが、今回、医療法第6条に新しく盛り込まれた改正文はこれと異なる。「身近な地域における日常的な医療の診療、疾病の予防のための措置、その他の医療の提供を行う」と書き換えられた。

 「身近な地域における日常的な医療」までは同じだが、その先が違う。「健康管理に関する相談」が、「疾病の予防のための措置、その他の医療の提供」に入れ替わっている。「健康相談」が消えてしまった。意図的に外したのであろう。


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