2023年1月30日(月)

日本の医療〝変革〟最前線

2022年12月29日

»著者プロフィール
閉じる

浅川澄一 (あさかわ・すみかず)

福祉ジャーナリスト、元日本経済新聞社編集委員

1948年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。71年、日本経済新聞社に入社。西部支社を経て、東京本社で流通業、サービス業などを担当。87年11月に生活情報誌『日経トレンディ』を創刊し、初代編集長に。93年に流通経済部長、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化やNPO活動など、社会保障全般を担当。2011年2月に定年退社。公益社団法人長寿社会文化協会理事。

 「かかりつけ医」機能の制度化問題が一応決着した。厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会医療部会(委員23人、部会長・永井良三自治医科大学学長)の第95回会合が12月23日に開かれ、厚労省が提出していたかかりつけ医機能の「骨格案」を了承したことによる。

(SARINYAPINNGAM/gettyimages)

 骨格案に基づいて、厚労省は次の通常国会で医療法改正案を提出する。

 6月7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)の中で、「コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」との方針に対する答えである。

 コロナ禍で、発熱患者がかかりつけ医と思っていた近隣の診療所や病院から受診を断られたり、ワクチン注射を受けられないケースが続出した。患者がどこの医療機関でも自由に受診できる「フリーアクセス」が看板倒れとなった。そこで、改めてかかりつけ医の役割を制度化しようというものだ。

 フリーアクセスと並ぶ医師の自由開業や診療科の自由標榜制などは日本の医療システムの土台を成す。その見直しまで筆が及ぶのか注目された。だが、ふたを開けてみれば、かかりつけ医の制度化には遠く及ばず、押し戻された格好だ。

消えてしまった認定・登録制

 了承された骨格案では、かかりつけ医の認定方法や登録制について全く触れていない。現在の医療提供制度を大きく変える見通しは消えてしまった。欧米諸国で浸透している「家庭医」(GP)とは異なる日本の現行制度は揺るぎそうにない。現状維持に固執する日本医師会の分厚い壁の前で退却してしまった。

 公的な認定制と登録制は財務省や健康保険組合連合会(健保連)が主張していた。一定の機能と質を担保するために、診療実績や専門研修の受講など数値に基づく認定法が確立されることが制度化につながる。信頼性を確保するには、認定者は第三者が必須だろう。

 どの住民も必ずどこかの医療機関へ事前に登録することも提案している。日常的な健康相談を受けられる体制づくりである。住民と医師が常日頃から信頼関係を持ちながら付き合いがあると、突然の病気や事故に遭っても対応しやすい。認定制と登録制は欧米で普及している家庭医制度では欠かせない要件である。

 日本医師会は「かかりつけ医は患者さんの自由な意思によって選択されます」(4月20日に発表した「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」から)と表明し、登録の義務付けに反対している。選択の責任は患者個人にあると言う。

 認定制については「最もふさわしい医師が誰かを、数値化して測定することはできません」(同)と、認定の公的な基準作りを強く拒絶している。


新着記事

»もっと見る