2022年12月2日(金)

日本の医療〝変革〟最前線

2022年11月9日

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浅川澄一 (あさかわ・すみかず)

福祉ジャーナリスト、元日本経済新聞社編集委員

1948年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。71年、日本経済新聞社に入社。西部支社を経て、東京本社で流通業、サービス業などを担当。87年11月に生活情報誌『日経トレンディ』を創刊し、初代編集長に。93年に流通経済部長、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化やNPO活動など、社会保障全般を担当。2011年2月に定年退社。公益社団法人長寿社会文化協会理事。

 2024年4月からの第9期介護保険の改訂に向けた「給付と負担」の議論がやっと始まった。参院選挙までは、国民への負担増につながる施策は棚上げされていた。制度施行以来23年。いよいよ団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる。サービス利用が一段と広がることは間違いない。

 月額平均2911円の保険料で22年前にスタートした制度は、今や2倍の6014円まで増えた。サービスが充実し、利用者が増えてきたからだ。

 そのピッチが急速に高まる。40年度には9000円程度に達する。国民の支払い能力には限度があると言われる。

東京・虎ノ門のビル内会議室で開かれた社会保障審議会介護保険部会の第100回会合。介護保険の利用料アップとサービス縮減の議論がはじまった(筆者撮影)

 そこで、制度の持続性を保つ策として、経済界や財務省の財政制度等審議会を中心に、利用料アップとサービス縮減への見直し圧力が高まっている。厚生労働省がこの圧力に抗しきれるか、官邸が世論をどのように読み込むか、攻防戦の幕が上がった。

 主な論点は6つある。まず、保険料について。①所得区分別の保険料の見直しと、②被保険者・受給者の拡大があげられる。次に利用料の拡大策として、③原則1割負担から2割負担に、④利用者には無料のケアプランの有料化、⑤介護保険施設などの室料を全額自己負担に。そしてもう一つは、サービスの縮減となる⑥要介護1、2で利用する訪問介護と通所介護(デイサービス)を介護保険の給付から外して市町村の地域支援事業(総合事業)に移行―――。

 なかでも、②の2割負担問題と④のケアプラン有料化、それに⑥要介護1、2の人の給付外しの3点が焦点になっている。

 社会保障審議会介護保険部会の第100回会合が10月31日に開かれて、審議がスタートした。年内に結論を出して、改正法案を来年の通常国会に提出する段取りである。

介護の担い手「家族から社会全体へ」に沿うのか

 これらを審議する際に、問われるのは何が判断基準になるかである。最も重要なのは介護保険の理念に照らし、合致するか否かであろう。その理念は「介護の社会化」である。

 介護保険を創設する際に掲げた「介護の担い手を家族から社会全体で」という考え方が多くの国民の支持を得た。息子の妻(嫁)や娘、妻たち、即ち女性たちに押し付けてきた家族介護からの「解放」という訴えが、受け入れられた。

 そのため、ほぼ強制徴収の介護保険料に抵抗感がなかった。保険とは言え、増税に近い財源の確保がすんなり進み、制度は無事離陸できた。「社会化」とは、さまざまな外部サービスを選択できることだ。しかも、費用負担が1割だけということも魅力だった。

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