2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2022年3月16日

 高齢化が進む中、介護業界の人手不足が懸念されて久しい。2021年に厚生労働省が公表した介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、25年度には約32万人、40年度には約69万人の追加確保が必要だという。

(Pornpak Khunatorn/gettyimages)

 国は増員のための施策に力を入れているが、果たして多くの人材が確保されれば介護にまつわる諸問題はすべて解決するのだろうか?

 在宅介護、看取りについての連載2回目の今回は、社会や個人にとって「いい介護」をつくるためにできることを考えていく。

利用者にとって訪問介護者は「恐怖」という時も

 筆者が介護サービス利用者の立場から疑問を持った発端は、介護が必要な両親と離れて暮らす遠隔介護の経験による。訪問介護・訪問看護・訪問リハビリを利用し、昨年末には父を在宅で看取ったのだが、数年前からのこの流れの中でもっとも苦労したのは、親と介護関係者との信頼関係づくりだった。

 認知症の母はローテーションで訪れるヘルパーさんがなかなか覚えられず、「知らない他人が毎日自分のプライベート空間に入ってくる」という恐怖と不信感で玄関の内鍵をかけて締め出してしまうこともあった。心を閉ざす母にはほとほと手を焼き、「助けてもらわなければ自宅で生活できないのだから」と説得していたが、固定のヘルパーさんに来ていただけるようになって次第に落ち着き、認知症の状態も悪化が止まった。この経験が、高齢者目線を置き去りにせず且つ安定した介護が供給できる状態とは何か、と考えるきっかけとなった。

 また、介護保険サービスを利用する立場として常につきまとうのは、生活援助や身体介護以上のことをしてもらっていることに対する「申し訳なさ」と「必要性」の葛藤であった。高齢者にとって重要な「コミュニケーション」の部分を大事にしてもらいたいと願うが、これは介護報酬体系の外にあり、求めると〝やりがい搾取〟につながるのではないか、と思ってしまう。

 高齢者やその家族が安心して暮らせて、介護事業者にも過度な負担を強いない『いい介護』とは、どうしたらつくられるのか。介護保障制度に詳しい千葉商科大学・齋藤香里教授は「超高齢社会で必要になるのは、社会全体の『介護リテラシー』を上げていくこと」だと提言する。


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