3月8日は国際女性デーだった。1908年に米ニューヨークで参政権のない女性労働者が労働条件の改善を要求してデモを行なったことを記念して、1975年、国連はこの日を国際女性デーと定めた。女性の「十全かつ平等な社会参加の環境」を整備するように呼びかける日になっている。
この日、日本経済新聞は日本の男女の賃金格差が大きく、それが経済成長を阻む要因になっていることを第一面で取り上げた。特集記事では持続可能な未来をつくるためには、女性リーダーの育成とジェンダー平等が必要であることを強く訴えた。
報道各社も、世界経済フォーラム(WEF)が発表するジェンダー・ギャップ指数をめぐって、日本の順位が格段に低く、対象となった156カ国の中120位と先進国の中で最も女性の地位が低いことを伝えた。
所得格差の拡大にもつながっている
日本のジェンダー不平等の大きさ、すなわち女性の地位の低さは、経済成長だけではなく、ひときわ低い出生率につながっている傾向がある。さらに出生率には、男女間格差だけではなく、賃金や雇用をめぐる格差拡大が強い影響を与えていることも忘れてはならない。
厚生労働省の調査によると、ジニ係数で計った日本の所得格差(再分配を考慮しない当初所得)は、1980年代半ばから拡大してきた。この格差を緩和するために、所得の再分配が行われるが、必ずしも格差縮小には結びついていない。税金・社会保険料を控除し、社会保障給付(現金・現物)を加えて算出した再分配所得の格差も、1980年代半ばから2000年代まで拡大し、近年は高い水準で横ばいになっている。
所得格差の拡大が、豊かな階層がより豊かになるなら問題は少ないかもしれないのだが、実態はそうではない。総務省の調査(就業構造基本調査)によれば、1997年から2017年までの20年間に、30代の雇用者の所得は400〜499万円、500〜699万円の所得階級の割合が大幅に低下し、反対に低所得階層(100〜199万円から200〜299万円)の割合が顕著に増加している。
コロナ禍の中で若者の所得格差がさらに拡大し、今や新しい生活困難層が生まれたとも言われている。所得格差拡大とジェンダー格差は、出生率に対してどのような影響を与えているのだろうか。