2024年4月26日(金)

ニュースから学ぶ人口学

2022年3月13日

解決の糸口は女性の正規雇用と結婚

 わかりやすい指摘である。しかしここで止まってしまっては問題の半分しか説明できていないことになる。雇用形態と有配偶率・未婚率に関しては、男性と女性の間には大きな違いがあるからだ。

 『男女共同参画白書 平成26年版』は、「労働力調査」(平成25年)に基づいて就業状態別・年齢階級別・性別に未婚者の割合を示している。男性に関しては自営業者や正規雇用者の未婚率は低く、年齢とともに低下する。反対に非正規雇用者と完全失業者の未婚率は高いままで推移している。

 ところが女性の場合は、自営業者の次に低いのは正規雇用者ではなく、非正規雇用者だ。正規雇用者の未婚率は非正規雇用者よりも高く、男性と違って完全失業者と大きな差がないのだ。厚生労働省の意識調査(「平成22年度社会保障を支える世代に関する意識等調査報告書」)は、よりわかりやすくこの関係を示している(図2)。

 男性の場合、正規雇用者の未婚率が非正規雇用者よりも、どの年齢階級でも低いということは、結婚に際して経済力が大きな要因になっていることを端的に示す。しかし女性の場合は関係が逆転していて、正規雇用者の方がどの年齢階級でも未婚率が高いのである。

 正規雇用者の未婚割合が高いことは、1人で暮らしていけるだけの稼得力があるから煩わしい結婚を避ける傾向にあることを意味するのか、あるいは正規雇用は仕事と結婚の両立が難しいことを意味しているのかもしれない。反対に非正規雇用者は結婚によって夫の稼得力に依存しているのか、それとも結婚した女性は非正規雇用による家計補助的な労働に甘んじざるを得ない状態に置かれているということだろう。

 いずれにしても、就業状態と家族形成の関係において男女間に違いがあることは、日本の女性にとって結婚と社会的進出の両立が困難であることを意味しているのだろう。またそれは男女ともに、夫は外で稼ぎ、妻は家事・育児・介護で内を守るという伝統的なジェンダー観から離れられていないことを意味しているのだろう。

 不安定な雇用形態や所得格差の拡大を是正するとともに、雇用と所得に関するジェンダー間の格差やその意識を変えていくことが出生率増加に寄与することとなる。

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