2024年4月24日(水)

ニュースから学ぶ人口学

2022年3月13日

結婚をめぐる変化

 1970年代半ばに始まる少子化の背景には、結婚をめぐる状況の変化がある。著しい晩婚化と50歳まで結婚したことのない人の割合である50歳時未婚率(いわゆる生涯未婚率)の増加だ。

 少子化が始まる直前の1970年と2015年の女性の年齢別出生率を見ると、有配偶女性に関してはほとんど変わっていない。それに対して、未婚者を含む全女性の出生率は、25〜29歳、30〜34歳の年齢階級で大幅に低下している。

 ただし晩婚化は晩産化を促していて、30代、40代では1970年の出生率を上回っている。それでも、25歳から34歳までの期間の大きな低下をカバーするには十分ではない。

 このことを端的に示すのは、合計特殊出生率の要素分析の結果である(図1)。終戦前と復興期の出生力低下には、有配偶率と結婚している女性の有配偶出生率の変化がともに寄与していた。晩婚化と夫婦間の避妊(「産児調節」)および戦後の人工妊娠中絶の普及である。

 ところが70年代を転換期として、80年以降、様相は大きく変わった。有配偶出生率はむしろ僅かながらプラスを維持しており、有配偶率の低下が足を引っ張っているのだ。

 初婚の平均年齢は70年の男性26.9歳、女性24.2歳から、2015年の男性31.1歳、女性29.4歳まで上昇している。これだけで結婚している女性1人あたり1人以上の出生数の減少になる。

 さらに注目すべきことは、50歳時の未婚率(いわゆる生涯未婚率)上昇だ。1980年代までは、日本の男女ともに50歳時未婚率は5%未満であり、世界の中でも低い地域だった。結婚するのが当たり前で、生涯に一度は結婚する者がほとんどを占める「皆婚」傾向の強い社会だった。90年代以降、それは急速に上昇して、2015年に男性は23.4%、女性も14.1%と欧米の水準に達している。

男女間で異なる独身でいる理由

 国立社会保障・人口問題研究所が定期的に実施している「出生動向基本調査」によると、「いずれ結婚するつもり」と答えた者は、1987年の男性91.8% 女性92.9%から、2015年の男性85.7%、女性89.3%へと下がってはいるものの、結婚に対する意欲はさほど弱まっているわけではない。

 ではなぜ、結婚が遅れ、あるいは未婚率が高まっているのだろうか。25〜34歳の未婚者に「独身でいる理由」(3つまで選択可)を尋ねた結果は、結婚に関する興味深いジェンダー間の違いを浮き彫りにしている。


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