男女ともに回答の第1位は「適当な相手にめぐり会わない」ことである。お見合いの慣習が廃れたために、なかなか相手を見つけにくくなっているのだ。民間の仲人サービスだけでは十分ではないと、行政も乗り出しており、現在、46都道府県で結婚支援事業を展開している。今年1月には静岡県でも、県と35市町が一体となって「ふじのくに出会いサポートセンター」を開設し、AIを活用して婚活支援を開始した。
独身でいる理由として、「自由な気楽さを失いたくない」「まだ必要を感じない」「趣味や娯楽を楽しみたい」「仕事(学業)にうちこみたい」といった、自発的な理由は男女ともに共通している。男女の比較で興味深いのは、「結婚資金が足りない」という回答である。女性では第6位だが、男性では第3位。男女間の差が11ポイントと最も大きい。このことは、女性では経済的な問題を結婚への障害と考える意識が弱く、男性の方がより強いことを意味している(表1)。
非正規雇用の増加
最新の「令和3年版 少子化対策白書」では、所得格差の拡大について失業率と非正規雇用との関係を取り上げている。若者(15〜34歳)の完全失業率はバブル崩壊とともに男女ともに上昇した、21世紀初頭にピークとなったが、2010年頃から低下しつつあった。ただしコロナ禍の影響か、20年にかけて再び上昇している(総務省「労働力調査(基本集計)」)。
長期にわたって深刻な影響を及ぼしているのが非正規雇用の増加である。バブル経済が始まる前の1984年に非正規雇用者(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など)の割合は、男性(全年齢)7.7%、女性(同)29%だった。その後、急速に上昇して、2014年(10~12月期)に男性は22%台に乗って以後、20年まで同程度の水準にある。
女性は14年(4〜6月期)に57.7%のピークに達したのち、概ね横ばいで推移している。この40年近くの間に、男性の非正規雇用者の割合はほぼ3倍、女性では2倍近く増加して6割が非正規雇用となっている(総務省「労働力調査特別調査」「労働力調査(詳細集計)」)。
目を逸らしてはいけない非正規雇用と結婚の関係
非正規雇用は採用する側にとっては経済状況に応じて雇用調整がやりやすい反面、被雇用者にとっては、不安定な雇用、低い所得、不十分な企業内福利厚生が家族形成に不利になっているのではないか。事実、多くの報告書が従業上の地位・雇用形態と年収が有配偶率と密接な関係があることを指摘している。
例えば「令和3年版 少子化社会対策白書」は、年齢別有配偶率は正規の職員・従業員で高く、非正規の職員・従業員で低いことを示している。非正規の中でも、パート・アルバイトの場合は一段と低い。同白書はまた、男性の年収別有配偶率についても触れていて、25歳から39歳までの男性のいずれの年齢階級でも、年収が高いほど有配偶者のいる割合が高い傾向にあることを指摘する。不安定な雇用形態や所得格差の拡大が結婚や出生意欲に大きく影響を与えており、雇用状況を是正していくことが出生率増加に寄与することとなるだろう。