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2021年7月29日

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結城康博 (ゆうき・やすひろ)

淑徳大学総合福祉学部教授

淑徳大学総合福祉学部教授。政治学博士。社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャーの資格を持ち、地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所での勤務経験をもつ。専門は介護と医療を中心とした社会保障政策。著書に『介護職がいなくなる: ケアの現場で何が起きているのか』(岩波ブックレット)など多数。

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アフターコロナへ向けて介護の人手不足は深刻になっていく(WEDGE)

 第5波が叫ばれ、新型コロナウイルス感染拡大が収まらない状況下ではあるが、ワクチンの浸透もあり、いずれは沈静化するはずである。そのため、アフターコロナを見据えて深刻さを増す介護人材不足が看過できなくなっている。コロナの影響で「退職・雇い止め」を余儀なくされ、他業界から「人」が来るのではないかという指摘もあるが、実際はそうではない。飲食調理関連の有効求人倍率を見る限り明らかだ。早急にアフターコロナを見据えて、介護人材不足対策の必要性について述べていきたい。

必要な介護職員は年間5万人増える

 2021年7月9日、厚生労働省より第8期介護保険事業計画に基づき必要とされる「介護職員数」の推計値が公表された。23年には現行計算値(19年時)よりも約22万人、25年には約32万人、40年には約69万人の介護職員が必要となるとされている(表1)。

 年間5万人弱が新たに介護の仕事に就かなければ、増加傾向にある要介護高齢者のニーズに対応できない。

 しかし、これほどの介護職員を確保できるかといえば、かなり難しい状況と言わざるを得ない。

 11年以降の出生数は減少傾向に歯止めがかからず、11年生まれた子どもが40年に29歳となることを考えれば、現行より69万人介護職員を増やすには至難の業であろう。(図1)

 では、団塊世代が全て75歳以上となる25年に向けて介護職員を増やしていけるかを考えてみよう。

 昨今のコロナ禍による労働市場の需給状況を鑑みて、介護業界に労働者が移転されるのではないかと期待する声もある。具体的には、飲食調理業界で「解雇」もしくは「休職」を余儀なくされた労働者が、一部、介護の仕事に就くのではないかということである。

 そこで、この約1年間の飲食調理関連の有効求人倍率を見てみると、その期待は「薄い」と言わざるをえない。この10ヶ月の有効求人倍率は、飲食調理関連全ての雇用形態において1倍を超えており、パートタイムおいては2倍前後で推移している(図2)。つまり、一部、報道で飲食関連の労働市場が厳しく「雇い止め」の傾向であるとの情報が飛び交っているが、有効求人倍率では1倍を下回らない。未だにこの業界は人手不足なのだ。いわば「雇い止め」の労働者がいても、別の飲食業の店に転職している可能性であり、介護業界へ転職するケースは少ないと考えられる。

 同じく介護関係の有効求人倍率の推移をみてみると、多少の改善傾向は見られているものの、全ての雇用形態において3倍を超えており、かなり人手不足が深刻な状況である(図3)。この先、コロナ禍が収束したならば、再度、4倍前後の厳しい状況になると予測される。

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