2024年11月22日(金)

日本の医療〝変革〟最前線

2022年11月9日

 2000年4月の制度発足以前にもヘルパーや一時的な宿泊サービスは先行していた地域もあった。だが、温度差が大きくバラバラだった。それを、分かり易い全国一律に切り替えたのも功を奏した。地域差がなくなり制度への理解が高まった。

 そうした観点からみると、②の2割負担への手直しは、理念の基本に関わりそうだ。1割負担から2割負担に変わると、「利用料が2倍になる」ということだ。

 同額しか払えないの利用者にとっては、サービス量の半減を迫られる。週4回のデイサービスや訪問介護を週2回に減らさざるを得ない。利用控えが起きる可能性が高い。日々の暮らしに折り合いを付けながら在宅サービスを使ってきた利用者にとっては大打撃となる。

 現在2割、3割負担の合計利用者は利用者全体の9%。「一定以上所得」として2割負担する人が5%程度、「現役並み所得」として3割負担する人は4%程度である。

 所得の下限を下げると10%を大きく超えてしまう。要介護者の大多数が日常的に利用できて初めて「社会化」である。「社会化」から外れてしまいかねない。

 利用者やその家族などからの抵抗も予想され、厚労省は原則1割に据え置く考え方に傾いているようだ。

ケアプラン「自己選択」の道筋はできている

 次に④のケアプランの有料化だが、これにも異論が多い。31日に開かれた介護保険部会では、「今まで無料だったのが有料になると、ケアプラン作りを控え介護サービスを止めてしまいかねない」(民間介護事業推進委員会代表委員)、「自分で作るセルフケアプランにする人が増え、専門職のチェックができなくなり質が落ちる」(日本医師会常任理事)など反対意見が大多数だった。

 だが、介護保険スタート時に「介護サービスの入り口を簡素にして使いやすくしたい」という思惑で無料とされたが、制度はすっかり定着し状況は一変している。ケアマネジャーの仕事を評価し、その処遇を高めるためには有料化は有力な手立てだろう。

 有料化を嫌って利用者自身がセルフケアプランを作る方向に進むのはむしろ歓迎すべきことだと思う。「介護サービスの自由選択」は、「介護の社会化」がもたらした画期的な考え方である。それまでの措置制度との違いとして強調された。

 自分でケアプランを作るセルフケアプランは、まさに「自己選択」を可能にする手続きであるはずだ。

打開策が見えていない要支援1、2への対応

 そして、目下の最大の争点は、⑥の地域支援事業への移行だろう。厚労省にとって頭が痛いのは、受け皿となる総合事業がいまだにあまり成果を上げていないことだ。

 既に、要支援1、2の利用者たちの訪問介護と通所介護が介護保険から総合事業に移っている。その総合事業の本命とされるのが「住民主体のサービス」である。主な担い手は有資格者でない近所の住民やボランティアだ。

 だが、自治体の中には「担い手が集まらない」として、事業を手掛けていないところも多い。

 また、利用者が多い「従前相当サービス」ではサービス単価が介護保険より2~3割低いため事業者の経営が苦しいこと、サービスには予算の上限があること、さらに自治体間でサービス内容に温度差が大きいことも指摘されている。こうしたマイナス要因を抱えていることから積極的な支持が得られるか疑問だ。

 介護事業者と専門職の団体から反対表明が出されたことも厚労省の意欲を揺るがしかねない。特別養護老人ホームの全国団体である全国老人福祉施設協議会が呼びかけて、全国老人保健施設協会、日本認知症グループホーム協会、日本介護支援専門員協会、日本介護福祉士会、日本ホームヘルパー協会、全国ホームヘルパー協議会、全国社会福祉法人経営者協議会の8団体が連名で10月21日に厚労省に要望書を提出した。

 要望書では「要介護1、2の利用者には認知症の人が多く、給付サービスがないと在宅での自立生活が難しい」と訴える。


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