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Wedge REPORT

2022年9月16日

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馬場未織 (ばば・みおり)

二拠点居住ライター

日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所勤務を経て建築ライターに。2007年から平日は東京、週末は千葉県南房総市の里山の二地域で居住する。田舎暮らしなどをテーマに執筆活動を展開。南房総の里山と都市に暮らす人をつなぐNPO法人南房総リパブリックの理事長も務める。著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

 親が高齢になって突然身近になるのが、「介護保険制度」である。介護サービスの利用者負担は1~3割、残りは介護給付費。この介護給付費の財源は、50%が税金、あとの50%は40歳以上の方が納める介護保険料である。

(Halfpoint/gettyimages)

 介護保険があることで出費が抑えられるのは率直にありがたい。家族だけでは支えきれない高齢者の生活を、介護サービスの利用によって支えてもらえるわけだから。

 ただ、介護保険制度で定められた介護サービスを基準にして考えると、どうも高齢者の生活が「サービス項目の内容」でできているかのように思えてくる。食事、排泄、入浴などの家族では手が足りないところさえ介護保険サービスで補えば生活は立ちゆく、というイメージだ。

 でも実際は、ヒトの暮らしはさまざまな要素が絡み合って構成されており、そんなにきっちり分節化されていない。また身体機能や認知機能も日々乱高下する。制度上、杓子定規にならざるを得ない介護保険制度は、それだけで人々の老後を安心するには至らないという実態が横たわる。

 今回は、介護保険だけではすくい切れない高齢者の暮らしの課題と、解決への動きをつくる事例について見ていく。

「保険内サービス」では充たされないもの

 介護サービス内容は細かく分節され、保険適用の対象のサービスかそうでないかは厳密に精査される。高齢者によかれと思って保険適用外サービスを〝サービス〟すると、違反として事業者は 罰せられるという。

 「細かく分節されている」内容は例えばこんなものだ。

・掃除や洗濯は含まれるが、家屋の補修や家具の移動は含まれない。
・通院のための外出介助は含まれるが、車での送迎介助、散歩の介助は含まれない。
・排泄介助や入浴介助は含まれ、理美容は含まれない。

 こうした保険外サービスへの需要を喚起すべく、東京都豊島区は2018年8月から21年3月まで、介護保険内外のサービスを適切に組み合わせて提供する「選択的介護」のモデル事業を進めた。利用者が保険外サービスを積極的に選択できる環境づくりだったが、2年半での利用は38件のみと普及は進まなかった。

 「保険外サービスもケアプランに位置づけることを必須としており、ケアマネージャーに負担感があった」と担当者は要因を語る。また、同区が公表した事業報告書では「10割負担のプランをケアマネが利用者に提案しにくい」などの声も報告された。

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