2022年10月5日(水)

都市vs地方 

2022年5月30日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 前回「都市と地方 どちらの子どもが幸せか」および前々回「都市と地方、子育て環境が充実しているのはどちらか」では、子育て環境と子どもの幸福度の観点から都市と地方を比較してきた。未来を担う子どものウエルフェアは重要であることはいうまでもないが、今回は逆に高齢者のウエルフェアに焦点を当てることとしたい。

(Tijana87/gettyimages)

 高齢者のウエルフェアという場合に、高齢者の幸福はどのような要素で決まるのかということが重要になる。そこで、はじめに幸福度の構成要素について概観することとする。

 子どもであれ、成人であれ、高齢者であれ、幸福の構成要素を明示することは容易ではない。しかし、ここで大変面白い研究結果を紹介したい。それは、2011年12月に内閣府経済社会総合研究所から発表された『幸福度に関する研究会報告―幸福度指標試案―』である。この報告書は、内閣府内に設けられた有識者からなる「幸福度に関する研究会」によって検討された幸福度指標に関する研究内容をとりまとめたものである。

 同報告書では、「幸福度指標とは、幸福度を具体的に見えるように各種指標で表したものである。すなわち、個々人の「幸福」をある程度、地域、時系列で比較可能にした物差しであり、評価のためのツールである」と述べられている。

 この報告書にもとづけば、「地域、時系列で比較可能にした物差し」が得られるということになる。しかも、国家機関が有識者とともに公式に検討した指標であるから、信頼性は高いと期待される。では早速、幸福度の構成要素を見てみよう。

国が認めた幸福の3大要素とは

 『幸福度に関する研究会報告』では、幸福度に関して「主観的幸福感を上位概念とする」ことが示されている。すなわち、公共投資など与えられた環境で人が幸福になるのではなく、個々人が主観的に感じる幸福感を優先して考え、その幸福感を高める条件を明らかにするというスタンスがとられている。

 その結果、主観的幸福感の構成要素として「経済社会状況、心身の健康、関係性を3本柱として指標化」することが示されている。図1は同報告書に示されている幸福度指標の体系である。

(出所)『幸福度に関する研究会報告―幸福度指標試案―』内閣府経済社会総合研究所(2011, p.9) 図表 4 幸福度指標試案体系図 写真を拡大

 幸福度の第1の柱である「経済社会状況」は、生きるための基本的ニーズが満たされていることとして、主に貧困等に直面していないことがあげられている。これに加えて住居や雇用(失業)など経済的な側面が反映されている。また、「社会制度」は社会に対する信頼を中心として、治安や投票率を通じた政治参加などが考慮されている。

 第2の柱である「心身の健康」は、身体的な健康だけではなく、長期疾患があるケースや要介護状態を反映する日常生活動作の指標(ADL)も考慮することが示されている。身体的な健康とあわせて、心の健康である精神面も重視されており、ストレス、うつ、希死念慮、自殺、認知症などの発生率が指標の要素として指摘されている。心身両面の指標としては、平均寿命や健康に対する自己評価も考慮するべきことが示されている。

 第3の柱である関係性は、ライフスタイルとして自由時間やその質、満足度のほか、家族、地域との人的関係を通じた孤独感や他者に役立っている感覚などが構成要素として挙げられている。このほか、図1の下部に横たわる「持続可能性」は上記の3つの柱とは別建てで環境面(二酸化炭素〈CO2〉、水資源、化学物質等)や生物多様性の維持等の考慮が必要とされている。ただし、「持続可能性」については報告書の中では国際的な見地からその重要性が強調されているものの、指標は客観的統計が中心であり主観的幸福との関連に関して明確なエビデンスが示されているわけではない。

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