2024年12月5日(木)

#財政危機と闘います

2022年10月31日

 少子化、高齢化が進行する中、社会保障は拡大を続け、しかもコロナ対策によって加速している。その結果、わたしたちの賃金は上がっても、実はその多くの部分が社会保険料として吸収されていることは、「給料が上がっても手取りが上がらない理由」で指摘した。

(imacoconut/gettyimages)

 実際、現役世代一人当たりで見た社会保険料負担(実質)は国民皆医療・皆年金が確立する直前の1960年8万7851円から2019年174万5740円と、実に20倍となっている。一人当たり国民所得に占める割合では1960年10.9%から2019年54.9%と、44ポイント上昇している。

 日本経済の実力を示す潜在成長率は内閣府の推計によれば趨勢的に低下を続け、足元では0.6%に過ぎない。今後も所得の増加は見込めそうにない。

 こうした状況下で現在のペースで現役世代の負担が増加していくのでは、とても現役世代の生活は成り立たない。当然少子化は一層加速し、社会保障制度の維持すら危うくなる。

 筆者は、年金支給開始年齢の引き上げ、社会保障給付全体の3分の1を占める高齢世代向けの社会保障給付を削減することで、社会保障の今後の拡大を抑え、スリム化するべきだとの立場であるが、そういう主張をすると、しばしば、「お前も年を取ればいずれ社会保障の恩恵を受けることになるのだから黙って我慢すべき」とか「高齢世代向けの社会保障を削減すればかえって子供たちの負担が増えるだけ」などと「忠告」や「反論」を浴びせられる。こうした主張は正しいのだろうか。

現在の社会保障給付水準を維持できるのか?

 現在は健康のため医師の世話になることも、年金を受け取っているわけでもないが、いずれ負担よりも給付がメインとなる年齢に達することになるだろう。しかし、だからといって、現在の給付水準が妥当かどうか、あるいは現在の給付水準を将来にも維持できるかどうかは全くの別問題である。つまり、将来受け取ることになる社会保障給付は現在の水準に必ずしも比例するものではなく、場合によっては維持不能である可能性もある。

 そこで、社会保障給付及び負担の将来推計を一定の前提の下で行ってみた。


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