2022年9月27日(火)

#財政危機と闘います

2022年9月7日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 日本では消費税負担の大きさが問題にされることはよくあるが、なぜか所得税や社会保険料負担の大きさが問題にされることは少ない。これは日本が高齢化し、所得税や保険料を負担する者が減少する一方で、所得がなくとも負担しなければならない消費税を負担する者が増加し、政治的な影響力を増してきたからである。

(akiyoko/gettyimages)

 しかし、現役世代の家計状況を総務省統計局「家計調査」によれば、消費税負担は月平均で2.9万円ほどであるのに対して、所得税や住民税など直接税は4.7万円、公的年金保険や医療保険など社会保険料は6.5万円と社会保険料負担が最も大きく、消費税負担の2倍以上となっている。

 さらに、最近、「給料は確かに上がったかもしれないが、社会保険料が上がって、手取りがかえって少なくなっている気がする」との声も聞かれる。同じく総務省統計局「家計調査」によれば、給料はこの10年で1.16倍にしかなっていないにもかかわらず、社会保険料負担は1.29倍になっているので、手取りが社会保険料のせいで減っているのは「気のせい」なんかではない。

 このように、本来問題にされるべきは消費税ではなく現役世代に集中する社会保険料負担の方である。そして、社会保険料の中でも今後さらに負担を増すのは現役世代が保険料負担だけでも4割を担っている後期高齢者医療制度だ。

後期高齢者医療制度とは

 後期高齢者医療制度は、原則、75 歳以上の後期高齢者全員が対象であり、75歳の誕生日を迎えるとそれまで加入していた国民健康保険や被用者保険から自動的に加入することになる公的医療保険制度の一つである。2006年の小泉純一郎内閣下での医療保険制度改革に盛り込まれ、08年4月に施行された「高齢者の医療の確保に関する法律」により発足した。

 都道府県毎に設置された「後期高齢者医療広域連合(都道府県の区域内の全市町村が加入する広域連合)」が保険者となり、保険料の徴収事務や申請・届出の受付、窓口業務については市町村が担う。本来、保険というのは、あるリスクに備えてそのリスクが降りかかる蓋然性が高い者が協力して運営するものであり、リスクに応じて保険料負担が決められるべきものである。

 しかし、後期高齢者医療保険制度の財源は、後期高齢者の自己負担を除けば、被保険者の払う保険料、健康組合等が拠出する後期高齢者支援金、国、都道府県、市区町村の税負担(公費)となっている。負担の内訳をみると、後期高齢者の保険料負担1割、後期高齢者支援金4割、税(公費)負担5割であり、税負担は、国:都道府県:市区町村=4:1:1となっている。

 後期高齢者がもっぱらメリットを得るのに、負担がたったの1割に過ぎないことは注目に値する。保険原理からは完全に逸脱している。また、後期高齢者の自己負担は所得水準によって異なり、原則は1割負担だが、一定以上の所得がある場合は2割、現役並み所得がある場合は3割となっている(2割負担は今年10月1日より)。なお、現役世代の窓口負担は2003年4月からすでに3割負担となっているが、後期高齢者の窓口負担を2割に引き上げるのですらすったもんだの大騒動であったのは記憶に新しい。

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