今、日本全体で見て一人の高齢者を何人の現役世代で支えているか、そして社会保険が存在しない世界では子供が親の面倒を見ることになるので、親の面倒を何人の子供で支えるかを比較すると、現状ではかろうじて社会保障制度に分があるものの、45年には社会保障制度のメリットがなくなってしまうことが分かる。
検証されるべき社会保障制度を維持する理由
つまり、45年以降の世界では、社会保障制度に頼ることで知らない親の面倒を見させられるよりも、自分の親の面倒だけを見る方が負担が少なくなる可能性もあるのだ。もちろん、こうした見方は社会保障制度の持つ広範な機能の一部を取り上げただけであり、機械的に過ぎるきらいはあるものの、それでも社会保障制度が必ずしも優位ではない。
いずれにしても、高齢者向け支出を減らすと困るのは、子供たちではなく、高齢者の側である。だから高齢者からの反発が強いのだ。
社会保障制度はすでにわたしたちの生活設計に欠かせない存在となっている。それだからこそ、少子化、高齢化が加速し、現役世代の暮らしぶりが一向に良くならない中でも国が社会保障制度を維持するメリットを粘り強く国民に説き、納得してもらう努力が必要なのではないだろうか。
しかし、何事も世論の反応を見てから対応を決める岸田文雄内閣にその能力も気概もあるのか、はなはだ心もとないのは、なんとも残念としか言いようがない。
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2008年をピークに、日本の総人口は急降下を始めた。現在約1億2500万人の人口は、2100年には6000万人を下回り、半分以下となる見込みだ。人口増加を前提とした現行の社会保障制度は既に限界を迎えている。昭和に広げすぎた風呂敷を畳み、新たな仕組みを打ち出すときだ。
特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。
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