2022年8月11日(木)

日本の医療〝変革〟最前線

2022年7月20日

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浅川澄一 (あさかわ・すみかず)

福祉ジャーナリスト、元日本経済新聞社編集委員

1948年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。71年、日本経済新聞社に入社。西部支社を経て、東京本社で流通業、サービス業などを担当。87年11月に生活情報誌『日経トレンディ』を創刊し、初代編集長に。93年に流通経済部長、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化やNPO活動など、社会保障全般を担当。2011年2月に定年退社。公益社団法人長寿社会文化協会理事。

 政府は平時から感染症対策を強化するため、内閣感染症危機管理庁と「日本版CDC」の創設を決めた。

 国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合、感染症の研究と臨床を一体化させるのが「日本版CDC」である。1万人以上の職員を抱え60カ国以上に拠点を構える巨大組織、米国の疾病対策センター(CDC)を見習ったというが、人員も予算も桁違い。本家から冷笑されそうだ。

岸田文雄政権が創設しようとする日本版CDCは米国のものとは人員も予算も大きく小さい(ロイター/アフロ)

 一方の危機管理庁は、内閣官房に新設。内閣官房は各省庁間の総合調整にあたり首相を直接補佐する役所。ワクチン確保など厚生労働省にもまたがっていた体制から指揮命令系統を明確にするのが狙い。

 官邸主導で自治体や医療機関を調整するというが、コロナ禍で難題だったコロナ専用病床への転換がスムーズになるのだろうか。同時に、初期的な対応を日常的に受け入れる地域の診療所、かかりつけ医がどのように参画するかが問われる。

なぜか協定から外れた民間病院

 病床確保の具体策として、都道府県が医療機関と協定を結ぶことにした。義務付けとなる医療機関は、公立・公的病院と大学病院などの大規模な特定機能病院である。なぜ、民間の普通の病院が外れたのか。今回のコロナ禍で、病床転換に同意したのは、公立・公的病院が中心で、民間病院は拒絶するところが多かった。

 ある調査によると、2021年1月時点で転換を拒んだ病院は、公立で6%、公的で15%なのに対し、民間では45%にも上った。200~400病床の中規模病院への調査だ。「コロナ拒否」した民間病院こそ協定の対象にすべきだろう。絶対数が多く住民に身近な存在だ。

 コロナ禍の当初、「コロナ患者は受診しません」と堂々と張り紙を出した診療所もあった。地域医療の役割を放棄したのが中小の医療機関。だが、保健所機能がパンクしたこの4月、政府は高齢者施設のコロナ患者を地域医療チームに委ねることにした。「感染者の一律入院」施策からの転換である。

 「地域内で医療・介護を完結させる」という地域包括ケアの原則がやっと実践された。担い手は訪問診療に熱心な在宅医たちであり、多くの地元医師会の長老たちは苦々しい思いで傍観していたのが実態だろう。

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