コロナ禍で地域医療の〝受け皿〟となる体制不足が露呈した。「プライマリ・ヘルス・ケア」を担う人材を早期に育成する仕組み構築が急務だ。「Wedge」2022年6月号に掲載されているWEDGE OPINION「医療人材の育成方法にメスを 地域に必要な専門医とは」では、そこに欠かせない視点を提言しております。記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まってもう3年目になる。「コロナ禍で、わが国の長年にわたる保健医療制度の問題が明らかになった」と言われるが、問題の根本的改善へ向けてのスピード感のある対応は、どのステークホルダーたちからも一向に見えてこない。補助金や診療報酬による誘導は、それに振り回される医療現場の混乱を生じかねず、本質的な解決からはほど遠い。
翻ってみると、日本の保健医療制度改革では、地域のニーズに応える能力を備えた専門職を〝キープレーヤー〟として育成する機会を何度も逃してきた。例えば、2000年の介護保険導入と13年の地域包括ケアシステム推進のタイミングだ。質の高い人材の育成も同時に達成されていればこれらの制度はもっと生かされていたはずだ。
本稿では、コロナ禍および今後の日本で、地域住民を癒し、健康を守るキープレーヤーとしての役割が期待される医師の人材育成について論じたい。
医療経済学を専門とする一橋大学の井伊雅子教授らは、財務総合政策研究所が刊行する『フィナンシャル・レビュー』の22年3月発刊号で、DPCデータ(DPC/PDPSという支払い方式を導入する比較的高機能な病院での診療データ)と国民健康保険・後期高齢者レセプトデータの分析結果をもとに、コロナ禍で露呈した日本のさまざまな保健医療制度の問題点を指摘しているが、特に重要な点が地域医療の〝受け皿〟となる体制の不足である。