2023年12月7日(木)

家庭医の日常

2022年4月25日

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葛西龍樹 (かっさい・りゅうき)

WONCA〈世界家庭医機構〉マスター・ファカルティー、福島県立医科大学名誉教授〈地域・家庭医療学〉

1984年北海道大学医学部卒業。北海道家庭医療学センター設立および所長を経て、2006年から福島県立医科大学医学部地域・家庭医療学講座主任教授。2023年退職。英国家庭医学会 最高名誉正会員・専門医(FRCGP)。著書に『医療大転換 ─日本のプライマリ・ケア革命』(ちくま新書)など多数。

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(ktasimarr/gettyimages)

<本日の学習者>
K.T.君、23歳男性、医学部5年生。

 今回登場するのは患者ではなく医学生である。

 地域に住む人たちへのケアをしつつ、医学生、研修医、そして家庭医・総合診療専門医を目指す専攻医を教育する地域に密着した診療・教育拠点を、私たちは県内で8カ所運営している。それらは複数の指導医がいる診療所と病院の総合診療科である。

 患者のケアとともに、医学医療を学ぶ若者にプライマリ・ヘルス・ケアと家庭医療学に興味を持ってもらい、その教育をすることも家庭医の重要な仕事なのだ。

 今回は、その拠点の一つ、私がいる診療所で先週実習した医学部5年生のK.T.君に登場してもらおう。

ある日の振り返りから

 5年生の実習は月曜日から金曜日までの5日間である。外来診療、訪問診療、多職種連携、などの現場で医学生がさまざまな経験ができる機会を提供している。

 そして、毎日夕方に「振り返り」という30分ほどの時間枠を設定していて、そこで指導医と医学生がその日一日の実習を振り返る。今日何を学べたか、もっと良く学びたかったことは何か、覚えておきたいことは何か、実習中にどんな感情を抱いたか、これから何をどんなふうに学びたいか、この実習をどう評価するか、質問はないか、などのテーマで自由に語ってもらって、指導医がフィードバックする。

 水曜日の振り返りの時に、K.T.君が私に質問した。

 「肺がんの検診って必要なんでしょうか」

 家庭医の指導医は、学習者(この場合は学生のK.T.君)から質問が出ると次のことが知りたくなる。 

(1) なぜ、学習者は今この質問をしてきたのだろう。
(2) このトピックに関して学習者は何を知っているだろう。


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