2024年12月4日(水)

#財政危機と闘います

2023年7月12日

世代別で格差が出ている社会保険料負担

 世代別の社会保険料負担額について厚生労働省「国民生活基礎調査」で見てみると、負担額でも、所得に対する比率でも40~50代で最大となり、70代以上では29歳以下の世代を下回る。また、25年前の1997年と比較すると負担増加額でも所得に対する比率の増加幅でもやはり40~50代で最大となっている。政府から見れば、70代以上ではその他の世代に比べても負担の増加は小さく、まだまだ負担余力があることも分かる。

(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」より筆者作成 写真を拡大

社会保障の肥大化は深刻な人手不足も起こす

 しかし、社会保障の膨張がもたらす問題は、国民を「揺り籠から墓場まで」支えるための全世代型社会保障を担保するために、私たちの負担が大幅に増して国民生活が破壊されてしまう皮肉な結果だけではない。深刻な人手不足も惹起する。

 2022年の年齢別労働力率および就業率を前提として、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」により、40年の労働力人口および就業者数を試算すると、それぞれ6001万人、5846万人と、22年より900万人、878万人減少することとなる。

 現在少子化、高齢化の進行により、業界問わず人手不足が叫ばれているが、このまま社会保障の膨張が進めば、労働集約型の産業である福祉業界に人手を多く割かなければならなくなる。実際、医療福祉産業の就業者数は22年現在908万人、就業者全体の13.5%を占めるが、高齢化の進行等を前提に機械的に試算すると40年では必要な就業者数は1068万人、就業者数全体5846万人の18.3%を占めることとなる。これでは、他の業界で人手不足が更に深刻化するのは火を見るより明らかだ。

 しかもこうした人手不足を補うために、高齢者も労働力として駆り出される。今の高齢者や高齢者予備軍は、老後は年金で悠々自適の毎日を送るはずが、社会保険料でカネをむしり取られ、あまつさえ労働力として働かされることになろうとはさすがに想像できなかったのではないか。しかし、これは現実であり、しかも社会保障を拡大するに任せて何らの対策も自らが行ってこなかった不作為の罪の結果である。要は自業自得ということだ。

 今のまま社会保障を維持しようと思っても、家計負担という金銭(カネ)面でも、労働力という支え手(ヒト)の面でも日本は早晩限界に達するだろう。


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